この記事を開いてくれたあなたは、きっとBluetooth5.3と5.4の違いがいまいち分からず、「結局どっちを買えばいいの?」「今使っている機器はそのままで大丈夫?」とモヤっとしているところかなと思います。
世の中にはBluetoothのバージョン違いに関する情報がいろいろあって、Bluetooth5.3と5.4比較をわかりやすく整理した情報や、Bluetooth5.3と5.4どっちが良いかをズバッと教えてくれる情報、さらにはBluetooth5.3と5.4通信距離の差やBluetooth5.3と5.4バッテリー持ちの違い、Bluetooth5.3と5.4イヤホン選びやBluetooth5.3と5.4スマートウォッチでの体感差、Bluetooth5.3と5.4対応機種一覧っぽい情報まで、探せばいろいろ出てきます。でも、Bluetooth5.3と5.4互換性と接続の話まで含めて一気通貫で整理されている記事は、意外と少ない印象です。
そこでこの記事では、無線エンジニアとしての視点を交えつつ、Bluetooth5.3と5.4の違いをできるだけかみ砕いて解説していきます。難しい仕様書の話はできるだけ裏側に押し込みつつ、「日常の使い勝手ではどう感じるか」「今から買うならどっちが良いか」を中心に、一緒に整理していきましょう。最後にはBluetooth5.3と5.4違いまとめ結論も用意しているので、読み終わるころには自分なりの答えがスッと決まっているはずです。
- Bluetooth5.3と5.4の技術的な違いと共通点が分かる
- イヤホンやスマートウォッチで体感できる差がイメージできる
- 自分の用途でどちらを選ぶべきか判断しやすくなる
- 2025年時点での対応機種の傾向と今後の流れを把握できる
Bluetooth5.3と5.4の違い概要
まずは、Bluetooth5.3と5.4の「土台はほぼ同じだけど、中身のチューニングが違うよ」というところから整理していきます。ここでは仕様書レベルの話をしつつも、「結局何が変わるの?」という視点でざっくり掴んでもらえるようにまとめます。
Bluetooth5.3と5.4の比較をわかりやすく
最初にざっくり結論からいきます。
- Bluetooth5.3:従来のBluetooth5.xの機能を「より省電力」「より安定」に振って改善した、最適化アップデート
- Bluetooth5.4:5.3までの改善に加えて、PAwRという新しい通信方式と、広告パケットの暗号化などを追加した「IoT寄りの拡張アップデート」
両者とも、ベースになっているのはBluetooth5.0で導入された2Mbpsの高速通信モードと長距離向けのLE Coded PHYです。なので、カタログスペックとしての最大通信速度や理論上の通信距離は、5.3と5.4でほとんど変わりません。ここでのポイントは、「速さや飛びやすさの“基礎体力”は同じで、その上に乗っている制御の賢さが違う」というイメージを持ってもらうことです。
Bluetoothはざっくり言うと、「クラシック(音声や従来の機器向け)」と「LE(省電力でIoTやセンサー向け)」の2系統がありますが、5.3と5.4の違いは主にLE側の話です。普段あなたが使っているワイヤレスイヤホンやスマートウォッチも、内部ではLEをかなり活用していて、ここが賢くなると「同じことをしているのに電池が長持ちする」「切れにくくなる」といった恩恵がじわっと効いてきます。
Bluetooth5.3で増えたもの
Bluetooth5.3で大きいのは、ざっくり言うと「同じことを、もう少し賢く・省エネでやる工夫」が増えたことです。劇的な新機能というよりは、裏側の交通整理がうまくなった感じですね。
- 接続サブレーティング:必要な瞬間だけ接続間隔を詰めて高速通信し、要らないときはすぐ省電力モードに戻す仕組み。通知や音楽の一部だけをサッとやり取りして、あとは寝ていてくれるイメージです。
- 広告パケットの重複検出:同じ広告データを何度も処理しないようにして、無駄な受信処理を減らす工夫。人混みの中で、同じビラを何枚も受け取らないようにする感じです。
- チャネル分類の強化:周辺機器側も自分の周りの電波状況を報告できるようになり、混雑していない周波数に逃げやすくなった機能。これにより、ノイズが多い環境でも通信の途切れが減りやすくなります。
こうした改善は、単体で見ると地味に見えるのですが、全部足し合わせると「同じように使っているのに、なんとなく前より安定している」という体感につながってきます。特にLE Audioや常時接続系のガジェットでは、じわじわ効いてくる部分です。
Bluetooth5.4で増えたもの
Bluetooth5.4になると、5.3の改善に加えて新しい通信モードが追加されます。これがPAwR(Periodic Advertising with Responses)と、広告パケットの暗号化機能です。
- PAwR(Periodic Advertising with Responses):従来は一方向だったBLE広告を、「多数対多数の軽い双方向通信」に拡張した仕組みです。電子棚札(値札)や大量センサーを、一つの親機からまとめて制御しつつ、それぞれから簡単な応答を受け取れるようにするイメージです。
- Encrypted Advertising Data:広告パケットのデータ部分を暗号化・認証できる仕組みで、なりすましや盗聴への耐性をアップします。今までは、接続後のデータは暗号化されていても、「広告」はわりと丸見えでした。5.4ではここも守れるようになった、というわけですね。
このPAwRと暗号化広告は、電子棚札や大量センサーなど「何千台もぶら下がるIoTネットワーク」を想定した機能です。イヤホンやスマホ単体ではあまり意識しませんが、裏側のインフラとしてはかなり大きなアップデートになっています。詳細な仕様は、Bluetooth SIGが公開しているBluetooth Core Specificationにまとまっています(出典:Bluetooth SIG「Core Specification (amended) 5.4」)。
| 項目 | Bluetooth5.3 | Bluetooth5.4 |
|---|---|---|
| 基本速度・距離 | 5.0と同等(2Mbps・LE Coded PHY) | 同等(5.0〜5.3と同じ土台) |
| 省電力機能 | 接続サブレーティングなどで効率改善 | PAwRを含め大規模IoT向けに最適化 |
| 通信方式 | 従来の接続+一方向広告が中心 | PAwRによる双方向な広告通信に対応 |
| セキュリティ | 一部手順で暗号化・認証の必須化など細かな改善 | 広告データ暗号化(EAD)を標準化 |
| 主な用途 | イヤホン、スマホ、PC、ウェアラブル全般 | 電子棚札、大規模センサー、資産トラッキングなどIoT寄り |
まとめると、Bluetooth5.3は「既存の枠内での完成度アップ」、Bluetooth5.4は「IoTネットワーク向けに新しい道具を足した進化版」という整理がしやすいです。一般ユーザーのあなたが日常で意識するのは主に5.3側のメリットで、5.4の真価は、店舗や工場、ビル設備などのインフラ側で発揮されることが多いと考えてもらうとイメージしやすいかなと思います。
Bluetooth5.3と5.4のメリットデメリット
Bluetooth5.3のメリット・デメリット
ここでは、Bluetooth5.3と5.4それぞれのメリット・デメリットを、できるだけ「製品選びの目線」で整理してみます。スペック表だけ見ていると分かりにくいので、「実際にどんなシーンで効いてくるのか」にも触れていきますね。
- メリット
- 既に対応機種が多く、スマホ・イヤホン・PC・スマートウォッチなど幅広い製品から選べる
- 省電力・安定性が4.xや5.0〜5.2より一段良くなっていて、特にLE Audioや常時接続系のガジェットで効きやすい
- 価格帯的にもミドル〜ハイレンジ機種に広く載っており、「ほどほどの価格で性能も十分」というバランスが取りやすい
- デメリット
- PAwRや広告暗号化など、5.4特有の新機能は使えないため、大規模IoTの実験・開発にはやや物足りない
- 今後、電子棚札や工場向けセンサーのような新しいユースケースが5.4前提で進んだ場合、その恩恵をフルには受けにくい
個人ユースで見ると、Bluetooth5.3のデメリットはそこまで致命的ではありません。むしろ、「今手に入りやすい価格帯の製品に多く載っている、こなれた世代」という意味で、現時点ではかなり扱いやすいバージョンだと感じています。
Bluetooth5.4のメリット・デメリット
- メリット
- PAwRで多数デバイスとの双方向通信がやりやすく、電子棚札・資産管理・ビル内センサーなどの実装が一気に楽になる
- 広告パケット暗号化により、ブロードキャスト通信まで含めてセキュアに設計しやすく、認証やなりすまし対策を強化しやすい
- 5.3までの改善も全部取り込んだ「全部入り」に近く、将来の拡張性や長期運用の観点で安心感がある
- デメリット
- 2025年時点では対応機種がまだ少なめで、スマホやイヤホンでは「選べるモデルが限られる」状況になりがち
- 一般ユーザーの日常利用(音楽・通話・通知など)に限れば、5.3との体感差はそこまで大きくないため、わざわざ5.4にこだわる意味が薄いケースもある
- 最新世代のチップを使う都合上、製品全体の価格帯もやや高めに寄りやすい
日常利用では「5.3だからダメ」「5.4じゃないとダメ」ということはありません。バージョン単体で判断するより、コーデックやバッテリー容量、アンテナ設計など機器全体の作りで判断した方が満足度は高くなります。逆に、バージョンだけを見て5.4対応モデルを選んでも、中身の設計がイマイチだと「スペックの割に使いにくい」という残念な結果になりかねません。
ざっくりまとめると、「今買う1台」として見るならBluetooth5.3でも十分実用的で、5.4は「IoTや今後の拡張性まで視野に入れたい人向けの少し先取りした選択肢」という立ち位置です。あなたが普段使っている機器の数や使い方をイメージしながら、このバランスを考えてみると良いと思います。
Bluetooth5.3と5.4の通信距離の差
よく「5.4の方が飛ぶんですか?」と聞かれるのですが、仕様上の最大通信距離は5.3も5.4もほぼ同じです。どちらも5.0以降で追加された長距離モード(LE Coded PHY)を使えるので、「理論値」としては差がありません。データシート上で見かける「最大〇〇メートル」といった表現は、ほとんどの場合バージョンというより送信電力やアンテナ設計、環境条件に依存しています。
違いが出るとすれば、ノイズが多い環境での「実効距離」です。5.3以降はチャネル分類が賢くなっていて、混雑した周波数帯をうまく避けながら通信してくれます。そのおかげで、例えばオフィスや駅構内のような電波が混み合う場所でも、「同じ距離でも切れにくい」「ブツブツ途切れにくい」と感じやすくなります。これは、周辺機器側もチャネル状態を報告できるようになり、中央側だけで判断していた頃より「お互いの視点を合わせてチャネルを選べる」ようになったおかげです。
体感としては、Bluetooth5.0の機器で10mあたりから音切れし始めた環境でも、Bluetooth5.3や5.4なら十数メートルくらいまでは安定しやすい、というイメージです。ただしこれはあくまで一般的な目安で、壁の材質(鉄筋コンクリートか、木造か)、人の密度、電波を出している他の機器(Wi-Fiルーターや電子レンジなど)の多さによって大きく変わります。
2.4GHz帯という周波数自体は、BluetoothもWi-Fiも電子レンジも同じ帯域を使っています。そのため、「距離の違い」というよりは「混雑しているときにどれだけ賢く避けられるか」が勝負どころになってきます。Bluetooth5.3と5.4は、この混雑の中での生存能力が少し高くなっている、と考えてもらうと分かりやすいかもしれません。
ちなみに、カタログで「Class1」「Class2」といった表現を見かけることがありますが、これはBluetoothデバイスの出力クラス(送信電力の目安)を示すもので、バージョンとは別の話です。同じBluetooth5.3でもClass1の機器とClass2の機器では、到達しやすい距離が変わってきます。
現実的には、「スマホとイヤホンが同じ部屋にあればほぼ問題なく使える」「部屋をまたぐと少し不安定になるかも」くらいに捉えておくのが無難です。もし「家の端から端まで、とにかく広くカバーしたい」という用途なら、BluetoothのバージョンよりもWi-Fiやメッシュネットワークなど別の技術も選択肢に入れて考えた方が、解決しやすいケースも多いですよ。
Bluetooth5.3と5.4のバッテリー持ち
バッテリー持ちに関しては、「5.4だから圧倒的に長持ち!」というような派手な違いはありませんが、細かい積み重ねで効率が上がっているのが5.3・5.4世代の特徴です。ここを誤解しやすいので、少し丁寧に見ていきます。
まず、Bluetooth機器の電池消費は、ざっくり次の要素で決まります。
- 送信・受信に使う無線回路(RF部分)の電力
- データ処理を行うマイコンやSoC(チップ)の電力
- ディスプレイやLED、センサーなど周辺回路の電力
Bluetooth5.3では、このうち無線回路が動いている時間をいかに短くするかにフォーカスした改善が多く入っています。接続サブレーティングによって、必要なときだけ接続間隔を詰めてデータをまとめてやりとりし、用が済んだらすぐスリープに戻る、という動きがやりやすくなりました。また、広告パケットの重複検出によって「同じ広告を何度も処理してしまうムダ」を減らせるので、受信側の無駄な消費も抑えられます。
Bluetooth5.4では、さらにPAwRを使うことで「多数の子機がごく短時間だけスキャンして応答する」設計がしやすくなりました。たとえば、数千台規模の電子棚札を運用するようなケースで、各タグが1日のほとんどを深いスリープで過ごし、ごく短時間だけ起きて親機の広告に反応する、といった運用をしやすくなります。人が使うガジェットではそこまで極端な運用はしませんが、この思想自体はスマートウォッチやセンサータグにも応用できます。
とはいえ、イヤホンやスマートウォッチの「連続〇時間再生」といったスペックは、SoCの種類やバッテリー容量、ノイズキャンセリングの実装などバージョン以外の要素にも大きく依存します。Bluetoothバージョンだけを見てバッテリー持ちを判断するのは、正直おすすめできません。
Bluetooth5.4だから劇的に電池が倍になる、というほどのインパクトは期待しない方が現実的です。「同じ世代なら、5.4対応機の方がちょっと有利かな」くらいのイメージで見ておくとよいです。
私の感覚では、同じシリーズの製品で5.2→5.3→5.4と世代が進むと、使い方にもよりますが数%〜数十%程度の改善が出ることはありえます。ただ、「1〜2日持たなかったスマートウォッチが、いきなり1週間持つようになる」といったレベルのジャンプは、バージョン違いだけでは起こりにくいです。そういう変化があるとすれば、バッテリー容量や表示方式(常時表示の有無)、センサーの省電力化など他の要素も同時に進化していると考えた方が自然です。
まとめると、バッテリー持ちを重視するなら、「バージョンは5.2以上であればOK、その上でチップ世代やバッテリー容量、OSの省電力設計をチェック」という順番で見ていくのがおすすめです。Bluetooth5.3・5.4は、その前提条件を満たした上で、さらにもう一段効率を上げてくれる存在、くらいに捉えてもらえると良いかなと思います。
Bluetooth5.3と5.4の互換性と接続
互換性については、ここを押さえておけばOKです。
- Bluetooth5.0〜5.4の機器同士は、基本的に問題なく接続可能
- ただし、使える機能は「数字の小さい方」に揃えられる(片方が5.4でも、相手が5.0なら5.0の範囲で通信)
- 4.0以降同士であれば互換性があり、LEによる省電力通信が可能
例えば、Bluetooth5.4対応スマホとBluetooth5.3対応イヤホンを組み合わせて使う場合、日常的な使い勝手で困ることはまずありません。単純に「5.3対応イヤホン」として動くだけで、PAwRなど5.4の新機能は使われない、というだけです。これはWi-Fiの「acとax」「Wi-Fi5とWi-Fi6」の関係と少し似ていて、新旧が混在していても基本的には下位互換で動く仕組みになっています。
ただし、ここでややこしいのが「プロファイル」と「コーデック」の存在です。Bluetoothのバージョンが合っていても、
- イヤホン側がAACに対応していない
- スマホ側がaptXに対応していない
- キーボードやマウスに必要なHIDプロファイルが片方にない
といったケースでは、「つながるにはつながるけど、期待していた機能が使えない」といったことが起こりえます。ここはバージョンとは別のレイヤーなので、「Bluetooth5.3だから全部OK」とは言えないところなんですよね。
機器によっては、Bluetoothバージョンとは別に対応プロファイルやコーデックが制限されている場合があります。正確な対応状況は、必ず各メーカーの公式サイトや取扱説明書で確認してください。特に業務用途で使う場合は、複数機種を組み合わせた接続テストを事前に行っておくと安心です。
「どうしても接続が不安定」「ペアリングすらできない」といった場合は、
- 一度ペアリング情報を削除して再登録する
- 両方の機器のファームウェアを最新に更新する
- 別の端末同士で組み合わせを変えてみて、どの組み合わせで問題が出るか切り分ける
といった基本的なトラブルシューティングも有効です。バージョンが違うからといって、すぐに「相性が悪い」と決めつける必要はなくて、多くの場合は設定やファームウェア更新で改善できる範囲に収まることが多いですよ。
Bluetooth5.3と5.4の違いと選び方
ここからは、「じゃあ実際に買うとき、Bluetooth5.3と5.4どっちが良いの?」という話にフォーカスしていきます。イヤホン選びやスマートウォッチ、対応機種の傾向を押さえつつ、あなたの用途に合わせた判断軸を整理していきましょう。
Bluetooth5.3と5.4どっちが良い
一般ユーザー向けの結論
まず、スマホ+ワイヤレスイヤホン+スマートウォッチといった典型的な使い方をする一般ユーザー目線での結論から。
「5.3なら十分、5.4ならなお良し」くらいの感覚でOKです。
- Bluetooth5.3でも、通信の安定性や省電力性はかなり高いレベルにある
- Bluetooth5.4は、その上でIoT向け機能やセキュリティが少し盛られているイメージ
- 日常の音楽再生や通話で、5.3と5.4の差をハッキリ体感できるケースはそう多くない
「スマホを2〜3年に1回くらい買い替える」「イヤホンは数年に1回くらい買い替える」というペースであれば、「今のタイミングで手に入れやすい、バランスの良い製品」を選ぶのが現実的です。その中でたまたまBluetooth5.4対応モデルが候補に入ってくるなら、「お、ちょっとラッキー」くらいの認識で良いと思います。
エンジニア・開発者向けの視点
一方で、電子棚札や工場内センサー、資産トラッキングといった多数ノードのIoTシステムを設計するエンジニアにとっては、Bluetooth5.4の価値はかなり大きくなります。
- PAwRで「1対多・多対1」の双方向通信を、標準のBluetoothだけで実装しやすい
- 広告パケットの暗号化が標準化されており、セキュアなブロードキャストが設計しやすい
- 将来的なBluetooth6.x世代のアップデートとも相性が良く、長期的に使えるプラットフォームになりやすい
こういった背景から、一般ユーザーは「機器全体の出来の良さ」で選ぶ、エンジニアは「5.4ベースでIoTシステムを設計する」という棲み分けになっていくかな、という感覚です。もしあなたが後者側で、「将来数千台規模のBLEタグをぶら下げるかもしれない」という構想を持っているなら、今のうちから5.4の仕様やサンプル実装に触れておくと、後々かなり楽になるはずです。
ちなみに、Bluetooth6.0以降では位置測位やチャネルサウンディングなど、さらに高度な機能も入ってきています。5.3と5.4は、その手前の世代として「安定接続と省電力の完成度を上げるステップ」として位置づけられているので、長期目線でプロダクトを設計する場合は、この流れも頭の片隅に置いておくと設計方針を決めやすくなります。
Bluetooth5.3と5.4イヤホン選び
ワイヤレスイヤホン選びで気になるのが、「Bluetooth5.4対応の方が音質がいいの?」というポイントだと思います。ここは誤解されやすい部分なので、少し丁寧に整理しますね。
音質はバージョンよりコーデックと設計
結論から言うと、音質自体はBluetoothのバージョンよりもコーデックとイヤホンの設計に大きく依存します。例えば、SBC/AAC/aptX/aptX Adaptive/LDAC/LC3(LE Audio)など、どのコーデックに対応しているかで音の傾向や遅延、ビットレートが変わります。
Bluetooth5.3と5.4は、どちらもLE Audio(LC3)を含めた最新のオーディオ系機能を扱える土台を持っているので、「5.4だから高音質」「5.3だから低音質」ということはありません。同じメーカーのイヤホンで世代更新されるときは、コーデック対応やドライバ、アンプ部分の改善の方が音質への影響が大きいです。
イヤホン選びでバージョンを見るポイント
とはいえ、バージョンにもそれなりに見るべきポイントはあります。イヤホン選びでチェックしておきたいのは、次のあたりです。
- 接続の安定性:混雑した環境でできるだけ切れにくい方がいいなら、5.2よりは5.3、5.3よりは5.4の方が有利になりやすいです。特に電車通勤やオフィスでの利用が多い人は、この差が地味に効いてきます。
- バッテリー持ち:同じシリーズで世代が新しい方が、省電力設計やチップの効率が良くなっていることが多く、結果として再生時間が伸びる傾向があります。
- 対応コーデック:自分が使いたいコーデック(例:iPhoneならAAC、Androidで高音質を狙うならLDACなど)に対応しているかどうかは必ずチェックしておきたいポイントです。
- マルチポイント接続:複数端末と同時接続したい場合は、バージョンだけでなくマルチポイント対応の有無と実装の品質も重要です。
カタログに書かれている「連続再生時間」や「低遅延モード」の数値は、あくまでメーカーのテスト条件での目安です。実際の使用環境では音量・コーデック・ノイズキャンセリングの有無によって大きく変動するので、最終的な判断はレビューや公式情報も確認した上で行うのがおすすめです。
まとめると、イヤホン選びでは「Bluetooth5.2以上であれば十分、その上でコーデック・ANC・フィット感・アプリの使い勝手を見る」という順に優先度をつけるのが現実的です。Bluetooth5.3と5.4の違いは、どちらかというと「安定性や省電力の微調整」の話なので、スペック表に載らない部分の総合力も含めて判断してあげると、後悔の少ない選び方ができると思いますよ。
Bluetooth5.3と5.4スマートウォッチ
スマートウォッチは、イヤホン以上に常時接続の安定性と省電力性が重要になります。通知の取りこぼしや、バッテリー切れで一日持たない状態は避けたいですよね。ここでは、Bluetooth5.3と5.4がスマートウォッチに与える影響を整理します。
5.3と5.4で期待できること
- 通知の安定性:接続サブレーティングにより、必要なタイミングだけ通信を詰めて、普段は省電力に待機できるようになりました。これにより、スマホとの距離が多少離れても通知が届きやすくなり、再接続もスムーズになります。
- マルチセンサー:心拍・SpO₂・GPS・加速度など複数のセンサーをまとめて扱う際の接続管理が改善されていて、運動中でもログが途切れにくくなります。
- 5.4の強み:今後、スポーツジムやスマートホーム機器との連携を強く打ち出した製品では、PAwRなどを使った新しい連携機能(多数マシンとの一括接続など)が出てくる可能性があります。
とはいえ、現時点(2025年)だと、「Bluetooth5.4でしか実現できないスマートウォッチの決定的な機能」は、まだそれほど多くありません。どちらかというと、SoCの世代が新しいことによる省電力化や、OSのチューニング、センサーの省電力設計の方が効いてくる印象です。実際、「同じBluetooth5.3対応」でも、メーカーや世代によって電池持ちや通知の安定性にかなり差があるのを感じるはずです。
スマートウォッチ選びでは、「Bluetoothバージョン」よりも「公式の電池持ち・対応OS・アプリの完成度・センサー精度」を優先して見るのがおすすめです。その上で、5.3や5.4に対応しているなら、「最新世代の無線まわりも整っているんだな」と安心材料として捉えるくらいがちょうどいいかなと思います。
また、iOSとAndroidで接続の相性が違うケースも珍しくありません。特定のプラットフォームで最適化されている製品もあるので、レビューや公式情報で「どのOSでの動作を想定しているか」も確認しておくと失敗しにくいですよ。
Bluetooth5.3と5.4対応機種一覧
「結局、どんな機器がBluetooth5.3で、どんな機器がBluetooth5.4なの?」というところも気になると思います。ここでは、2025年11月時点のおおまかな傾向を整理します。個別製品の型番まで網羅するのは現実的ではないので、「どの世代の製品を選ぶと、どのあたりのバージョンになりやすいか」を押さえておきましょう。
| カテゴリ | 発売時期の目安 | よくあるバージョン | コメント |
|---|---|---|---|
| スマートフォン | 2022〜2023年の多くのモデル | Bluetooth5.3が主流 | ハイエンド〜ミドルレンジまで広く採用 |
| スマートフォン | 2024〜2025年のフラッグシップ機 | Bluetooth5.3〜5.4 | 一部の最新チップセットで5.4対応が始まっている |
| ワイヤレスイヤホン/ヘッドホン | 2022〜2024年モデル | Bluetooth5.2〜5.3 | 電池持ちと安定性のバランスが良い世代 |
| ワイヤレスイヤホン/ヘッドホン | 2024〜2025年の新モデル | Bluetooth5.3〜一部5.4 | 5.4対応をうたうハイエンド機が少しずつ登場 |
| PC・タブレット | 2023年以降のモデル | Bluetooth5.3が多く、一部5.4 | 無線モジュールの世代に依存することが多い |
| IoT・産業機器 | 2023年以降の新設計品 | Bluetooth5.3〜5.4 | 電子棚札やセンサーなどで5.4採用が進みつつある |
上の表は、あくまで2025年時点での一般的な傾向をざっくりまとめたものです。正確な対応バージョンは、必ず製品のスペック表や公式サイトで確認してください。また、BluetoothのバージョンはOSアップデートでは変わらないことが多く、ハードウェア依存である点にも注意が必要です。
チェックのコツとしては、
- スマホ:公式サイトの「通信・位置情報」の項目にBluetoothバージョンが明記されていることが多い
- PC:メーカーサイトの仕様表のほか、「Wi-Fi/Bluetoothモジュール」の型番からデータシートをたどる方法もある
- イヤホン:パッケージや商品ページに「Bluetooth5.3対応」などと表記されているが、バージョン記載がない製品もある
といったあたりになります。記載が曖昧な場合は、サポートに問い合わせると教えてもらえることもあります。
また、「Bluetooth LE」「Bluetooth Low Energy」などの表記は、バージョンとは別に「省電力モードに対応しているか」を示すものです。5.0以降の製品ならほぼLE対応ですが、古めの機器と組み合わせる場合は、念のためこの辺りも確認しておくと安心です。
Bluetooth5.3と5.4違いまとめ結論
最後に、Bluetooth5.3と5.4違いまとめ結論として、ポイントをもう一度整理しておきます。ここまで読んで「結局どう考えればいいか」をサッと振り返りたいときに使ってください。
- 技術的には:Bluetooth5.3は省電力と安定性の最適化、Bluetooth5.4はそこにPAwRと広告暗号化を加えたIoT寄り拡張
- 日常利用では:音楽再生や通話での体感差は小さく、5.3でも十分快適に使える
- 将来性では:大規模IoTやスマートリテールなどを視野に入れるなら5.4ベースの設計が有利
- 選び方の現実解:一般ユーザーは「バージョン+製品全体の完成度」で選び、エンジニアは用途に応じて5.4の新機能を使うかどうかを判断する
個人的には、「今すぐ買い替えたいかどうか」をBluetoothのバージョンだけで決める必要はないと思っています。それよりも、今の不満(音切れ・電池・使い勝手)がどれくらいあるか、そして新しく買う製品がその不満を解消してくれるか、という視点で見てあげる方が、結果的に満足度の高い選び方になります。
なお、ここで紹介したバージョンの特徴や対応機器の傾向は、あくまで2025年時点の一般的な情報と私の経験に基づく目安です。Bluetoothの仕様や各製品の対応状況は日々アップデートされていくので、正確な情報はBluetooth SIGや各メーカー、各国の監督官庁などの公式情報を必ず確認してください。
特に、業務用途で無線機器を設計・導入する場合や、電波法などの法令遵守が絡むシステムを構築する場合は、各国の法令やガイドラインを確認した上で、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。最終的な判断は、あなた自身の利用環境や要件に合わせて慎重に行ってください。