電子工作やアマチュア無線でNanoVNAを使ってみたいと思っても、いざAmazonなどで探してみると、「H4」「V2」「Plus4」「F V3」「LiteVNA」など似た名前の機種がずらっと並んでいて迷いますよね。
しかも、NanoVNAはスマホのように「数字が大きいモデルほど新しくて高性能」という単純な製品ではありません。見た目が似ていても開発元や内部回路が違い、得意な周波数帯もかなり違います。

たとえば、HFや144MHz帯のアンテナ調整が中心なら、6GHzまで測れる機種を選ぶ必要はありません。反対に、2.4GHzのWi-Fiアンテナや5.8GHz帯のアンテナを測りたいのに、価格だけを見てNanoVNA-H4を買うと、そもそも必要な周波数まで届かないということになります。
さらに注意したいのが、「測定周波数の上限=その周波数まで同じ性能で正確に測れる」という意味ではないことです。測定原理、ダイナミックレンジ、キャリブレーション方法、ケーブルやコネクタまで含めて考えないと、画面には数字が出ているのに、その数字をどこまで信用してよいのか分からないという状態になってしまいます。
この記事では、NanoVNAの主要な種類について、単なるスペック比較だけではなく、回路構成や測定方式の違いまでできるだけ分かりやすく整理します。そのうえで、「アンテナ調整ならどれ?」「430MHzでもH4でいい?」「2.4GHzや5.8GHzを測るなら?」「フィルタ測定なら?」といった、購入前に迷いやすいポイントまで具体的に見ていきます。
私はRF回路やアンテナ設計、EMC対策に関わる仕事をしてきましたが、測定では測定器そのものの性能だけでなく、キャリブレーションする位置、使用するケーブル、変換コネクタ、測定する周波数範囲などによって結果の見え方が変わります。NanoVNAも同じです。最高周波数だけを比較するのではなく、「何を、どの程度の精度で測りたいのか」から選ぶことが大切ですよ。

- H4・V2系列・NanoVNA-F V3・LiteVNA・VNA6000など主要モデルの違い
- HF・144MHz・430MHz・2.4GHz・5.8GHzなど用途別の選び方
- アンテナ調整とフィルタ測定で必要な性能が違う理由
- クローン品や出所の分からない製品を買うときの確認ポイント
- 正確な測定結果を得るために必要なキャリブレーションとコネクタの基礎知識
- 「6GHz対応」という表記を見るときに注意したいポイント
結論:NanoVNAは最高周波数ではなく「何を測るか」で選ぶ
細かい仕組みの前に、「結局どれを選べばいいの?」というところから整理しておきます。
NanoVNA選びで最初に決めたいのは予算ではなく、測定したい周波数と測定対象です。同じアンテナ測定でも7MHzと5.8GHzでは条件がまったく違いますし、アンテナのSWRを見るのと、数十dB以上減衰するフィルタの阻止帯域を見るのとでも必要なダイナミックレンジが変わります。
| 主な用途 | 候補 | 選ぶ理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| HFアンテナ | NanoVNA-H4 | 低い周波数を基本波で測定でき、価格とのバランスがよい | 必要以上に高周波対応機を買う必要はない |
| 144MHzアンテナ | NanoVNA-H4 | 300MHz以下の基本波領域に含まれる | 測定直前のキャリブレーションは必要 |
| 430MHzアンテナ | H4またはV2 Plus4 | SWR調整中心ならH4も候補。より高域の余裕を求めるならV2 | H4では430MHzは高調波を利用する領域 |
| 2.4GHz Wi-Fiアンテナ | LiteVNA64 | 2.4GHzを余裕を持ってカバーし、5GHz帯のアンテナ測定にも広げやすい | 日本の6GHz帯Wi-Fi全体まではカバーできない |
| 2.4GHz帯のフィルタ・デュプレクサ | V2 Plus4 | 高いシステムダイナミックレンジを活かしやすい | アンテナのSWR測定だけなら性能を持て余す場合がある |
| 5.8GHzアンテナ | LiteVNA64、NanoVNA-F V3、VNA6000 | 5.8GHz付近まで測定できる | 機種によってダイナミックレンジに差がある |
| フィルタ・デュプレクサ | V2 Plus4 / Plus4 Pro、VNA6000 | 高いダイナミックレンジを確保しやすい | 最高周波数よりダイナミックレンジを重視したい |
| 持ち歩き・屋外測定 | H4、LiteVNA64 | 本体だけで測定しやすく携帯性が高い | 購入するハードウェア版や保存機能も確認する |
HFや144MHz帯のアマチュア無線アンテナが中心なら、NanoVNA-H4は今でも選びやすいモデルです。2.4GHzや5GHz帯のアンテナまで測定範囲を広げたいならLiteVNA64が有力です。
一方、アンテナのSWR測定だけでなく、フィルタやデュプレクサの通過特性・阻止特性まで詳しく測定したい場合は、高いシステムダイナミックレンジを持つV2 Plus4を検討する価値があります。

NanoVNAの種類ごとの違いと性能を徹底比較
NanoVNAは、開発経緯や設計思想によって複数の系統に分かれています。ここを理解しておくと、「V2だからH4より必ず上」「V3だからV2よりすべて優れている」といった誤解をしにくくなります。
名前だけを見るとスマホやCPUの世代番号のように感じますが、NanoVNAの場合はそれほど単純ではありません。H4、NanoRFEのV2、SYSJOINTのFシリーズ、ZeenKoのLiteVNAなどは、それぞれ異なる開発経緯を持っています。
そのため、「NanoVNAという一つの商品にたくさんのグレードがある」というより、「NanoVNAをルーツにした複数の小型VNAが存在している」と考えた方が分かりやすいかなと思います。
初心者に選びやすい定番モデルNanoVNA-H4
NanoVNAの原点は、日本のedy555氏が開発したオープンソースのNanoVNAです。その設計をもとにHugen氏が電源回路や基板などを改良して展開したのがNanoVNA-H系列で、4インチ画面を採用したモデルがNanoVNA-H4です。
H4の大きな魅力は、価格を抑えながらS11・S21、SWR、インピーダンス、スミスチャートなど、VNAとして使いたい基本機能を一通り扱えることです。
特に4インチ画面は、2.8インチ級の小型モデルと比べるとかなり見やすくなります。アンテナの共振点を探したり、スミスチャート上のマーカーを確認したりするときは、単純なCPU性能よりも画面の見やすさが作業性に効いてきます。
技術的に面白いのは、NanoVNA-H系列がSi5351系のクロックジェネレータを利用しながら、高調波を使って測定周波数を拡張しているところです。
Hugen氏の公開資料では、50kHz~300MHz付近ではSi5351の直接出力を利用し、それより上では奇数次高調波を利用して測定範囲を広げる仕組みが説明されています。代表的なNanoVNA-H4は1.5GHz付近までを測定範囲とする製品として流通しています。
ここで大事なのが、300MHzを境に測定方法が変わるという点です。
300MHz以下では基本波をそのまま利用できます。一方、それより高い周波数では3次、5次といった高調波を利用するため、同じ「測定可能範囲」の中でも測定条件は同じではありません。
つまり、144MHz帯はH4が得意とする基本波領域ですが、430MHz帯は高調波を使う領域です。
430MHzのアンテナのSWRや共振点を確認する用途であればH4を候補にできますが、「430MHzまで全部300MHz以下と同じ条件で高精度に測れる」と考えるのは避けた方がよいでしょう。高いダイナミックレンジが必要な部品測定まで考えるなら、V2 Plus4なども比較したくなります。
144MHz帯と430MHz帯そのものの電波の違いについては、アマチュア無線144MHzと430MHzの違いを解説でも詳しく整理しています。
バッテリーについてもH4はフィールド測定と相性がよく、Hugen氏のH4資料では1950mAhバッテリーで8時間以上使用できる構成が紹介されています。実際の連続使用時間は画面輝度やハードウェア版、バッテリー状態などでも変わるので、公称値は目安として見ておくのがよいでしょう。
NanoVNA-H4ではmicroSDを利用できるハードウェアやファームウェアがありますが、流通しているH4はハードウェアRevや実装状態に差があります。microSDスロットの実装、ケース側の開口、利用できる機能まで、すべての「H4」が同一とは限りません。
また、Hugen氏の公式GitHubで案内されている標準的なファームウェア更新方法はUSB経由のDFUです。「H4なら必ずmicroSDだけでファームウェア更新できる」と決めつけず、購入する商品のハードウェアRevと説明を確認してください。
HF~144MHz帯を中心にアンテナのSWR、共振周波数、インピーダンスを確認したいなら、H4は価格と使いやすさのバランスが取りやすいモデルです。一方、430MHz以上を本格的に扱うほど、「上限周波数」だけでなく、その帯域でどのように信号を生成・受信しているのかも重要になってきます。
Amazonなどでは同じ「NanoVNA-H4」という名称でも販売元やハードウェア版が異なる場合があります。価格だけで決めず、基板Rev、付属キャリブレーションキット、バッテリー、USB端子、ファームウェア情報なども確認してから購入すると安心です。
NanoVNA V2系列は高周波帯とS21測定を重視した別系統のVNA
NanoVNA V2系列は、H4を単純に高周波対応へ拡張したモデルではありません。NanoRFEによって従来のNanoVNAとは異なるアーキテクチャで新たに設計された、別系統のVNAです。
初期のNanoVNA V2やS-A-A-2、その後のV2 Plus、V2 Plus4、V2 Plus4 Proなど複数のモデルがあり、世代によって測定周波数範囲やダイナミックレンジなどの性能が異なります。そのため、「NanoVNA V2」という名前だけを見て、すべて同じ仕様だと考えないことが大切です。
なお、「NanoVNA-F V2」というよく似た名前の製品もありますが、こちらはSYSJOINTが展開するNanoVNA-F系列です。ここで紹介しているNanoRFEのNanoVNA V2系列とは別の製品なので、購入するときは「F」の有無にも注意してください。
NanoRFEによれば、NanoVNA V2は従来のV1系とは異なるアーキテクチャとして設計されており、初期設計ではADF4350 RFシンセサイザなどを使用しています。H4が300MHzを超える領域で高調波を利用して測定範囲を広げるのに対し、V2系列では高い周波数まで基本波を利用して測定できるよう設計されている点が大きな違いです。
ただし、V2系列の中でも測定できる周波数は同じではありません。初期のV2_2やV2 Plusは50kHz~3GHz、後に登場したV2 Plus4では50kHz~4.4GHzまで測定範囲が拡張されています。「NanoVNA V2=3GHz」あるいは「NanoVNA V2=4.4GHz」と一括りにせず、購入するモデルごとの仕様を確認してください。
V2 Plus4とV2 Plus4 Proの違い
現在のV2系列で名前が似ていて分かりにくいのが、V2 Plus4とV2 Plus4 Proです。どちらも測定周波数範囲は50kHz~4.4GHzで、Proだから測定できる最高周波数が高くなるわけではありません。
大きな違いは、V2 Plus4 ProではIFBW(中間周波数帯域幅)を調整できることです。IFBWを狭くすると測定速度とのトレードオフになりますが、ノイズを抑えやすくなり、結晶振動子や非常に狭い帯域幅を持つフィルタなどを測定しやすくなります。
なお、V2 Plus4 Proは当初「V2 Plus5」と呼ばれていたモデルです。現在のNanoRFE公式名称はV2 Plus4 Proですが、Amazonの商品名や本体のバージョン表示などには「V2 Plus5」という旧名称が残っている場合があります。
一般的なアンテナのSWRやインピーダンス測定、通常のフィルタ測定が中心ならV2 Plus4でも十分検討できます。一方、非常に狭帯域なデバイスの測定や、IFBWを調整しながらノイズと測定速度を細かく追い込みたい場合はV2 Plus4 Proを選ぶ意味があります。
V2系列を選ぶうえでもう一つ重要なのが、ダイナミックレンジです。
ダイナミックレンジは、ざっくり言えば「大きな信号から非常に小さな信号まで、どれくらい広い範囲を見分けられるか」を表す目安です。
アンテナのSWRや共振周波数を確認するだけなら、極端に大きなダイナミックレンジが必要になる場面はそれほど多くありません。一方、フィルタの阻止帯域やデュプレクサのアイソレーションのように、入力した信号が何十dBも小さくなる部分まで確認したい場合は、この性能がかなり重要になります。
ダイナミックレンジにもモデルごとの差があります。NanoRFEの公式仕様では、V2 Plus4は1GHz・AVG=20の条件で90dBです。V2 Plus4 Proでは調整可能なIFBWを利用でき、IFBW=1.6kHz・AVG=20・1GHzという条件では96dBという値も示されています。
ただし、これは「V2 Plus4 Proなら常に96dBで測定できる」という意味ではありません。実際のダイナミックレンジは周波数、IFBW、平均化、キャリブレーション状態などによって変わります。スペック表では最大値だけではなく、その値が得られた条件まで確認することが大切です。
また、「V2系列だからすべて90dB以上」という意味でもありません。V2 Plus4やV2 Plus4 Proの性能値を、初期のV2や別メーカーが販売するV2互換機へそのまま当てはめないように注意してください。
V2 Plus4などのモデルでは、アルミ筐体やRFシールドも採用されています。周波数が高くなるほど、測りたい経路以外から回り込む信号や外来ノイズの影響を受けやすくなるため、最高周波数だけでなく、こうしたシールド構造も測定器を選ぶうえで重要なポイントです。
NanoVNA V2系列は、単に「高い周波数まで測りたいから選ぶ」というより、アンテナ測定に加えて、フィルタやデュプレクサなどのS21測定まで行いたい人に向いています。
特にV2 Plus4やPlus4 Proのような高いダイナミックレンジを持つモデルは、通過帯域だけでなく、信号が大きく減衰する阻止帯域まで確認したい場合に強みがあります。
一方、2.4GHzのWi-FiアンテナについてSWRやインピーダンスを確認することが中心なら、6.3GHzまでカバーするLiteVNA64も有力です。V2系列は「高周波対応だから上位」という位置づけではなく、測定する対象や必要なダイナミックレンジによって選ぶモデルと考えると分かりやすいでしょう。
操作性と大画面を重視するならNanoVNA-F V3
SYSJOINTが展開するNanoVNA-Fシリーズは、画面の見やすさや本体単体での操作性を重視したい人に向いています。
ここでは旧NanoVNA-FやF V2と、現在のNanoVNA-F V3の仕様を混同しないことがポイントです。NanoVNA-F V3の公式仕様では、測定範囲は1MHz~6GHz。画面は4.3インチのIPS TFTで、解像度は800×480です。
屋外で使う場合、最高周波数やダイナミックレンジばかりに目が行きがちですが、「画面を読めるか」「マーカーを動かしやすいか」という操作性もかなり重要です。
SYSJOINTはV3について、高輝度IPS画面と抵抗膜式タッチパネル、3つの物理ボタンを採用していると説明しています。スマートフォンの静電容量式タッチパネルとは方式が違うため、「スマホとまったく同じ操作感」と考えるより、測定器としてタッチ操作と物理ボタンを併用できるモデルと考えると分かりやすいでしょう。
スキャン速度は最大約200ポイント/秒、スキャンポイントは最大801ポイントとされています。アンテナやフィルタを調整しながら波形の変化を追いたい場合には、更新速度の速さも使い勝手に関わってきます。
バッテリーについては、V3の公式仕様では4500mAhで最大約5時間です。旧NanoVNA-F V2には5000mAh・最大約7時間という仕様があるため、ネットで比較すると数字が混在しやすいところですね。
NanoVNA-F V3のS21ダイナミックレンジは公式仕様で65dB、S11は50dBとされています。6GHzまで測定できるのは大きな魅力ですが、「最高周波数がV2 Plus4より高い=すべての測定でV2 Plus4より高性能」というわけではありません。
ここがNanoVNA選びの面白くも難しい部分です。
5.8GHzまで到達したいならF V3にメリットがあります。一方、4GHz以下で大きな減衰量を持つフィルタを細かく見たいなら、ダイナミックレンジの大きいV2 Plus4系を選ぶ考え方もあります。
2.4GHzから5.8GHzまでのアンテナ測定に使いやすいLiteVNA64
2.4GHzのWi-Fiアンテナから5GHz帯、5.8GHz帯のアンテナまで幅広く測定したい場合に有力なのがLiteVNA64です。
LiteVNAは50kHz~6.3GHzという広い測定範囲を持っているため、HF・VHF帯から2.4GHz、5GHz台まで1台でカバーできます。特にアンテナのSWR、リターンロス、インピーダンス、共振周波数を確認する用途なら、2.4GHz帯でも十分検討できるモデルです。
また、将来的に2.4GHzだけでなく5GHz帯のアンテナも測ってみたい場合、測定器を買い替えずに対象を広げやすいのもメリットです。
ZeenKoの公式情報では、LiteVNAはNanoVNAとSAA2をもとに改良した小型VNAとして紹介されており、測定範囲は50kHz~6.3GHzです。内部構成にも特徴があり、消費電力と本体サイズを抑えるために1個のミキサーと複数のRFスイッチを使用し、S11とS21を測定する構成になっています。TDR・DTFについてはIFFTを利用します。
LiteVNA64は3.95インチ画面を搭載したモデルで、CQ出版社の販売仕様では2000mAhのリチウムポリマーバッテリーを内蔵しています。
そしてフィールド測定で便利なのがmicroSDカードです。ZeenKoも、LiteVNAにはmicroSDスロットがあり、測定データや画面を保存できると案内しています。測定するたびにPCへつなぐ必要がないので、屋外でアンテナを調整し、測定結果をあとで確認したい場合にはかなり相性のよい機能です。
ただし、LiteVNAについても「6.3GHzまで測れる」という数字だけで購入を決めない方がよいでしょう。
高周波になるほどケーブル、コネクタ、キャリブレーションキット、基板のわずかな構造まで結果へ影響しやすくなります。6GHz近辺を測る場合、1GHz以下のアンテナ調整と同じ感覚でSMA変換アダプタを何段も挟むと、測定系そのものの影響が無視できなくなってきます。
LiteVNAでは、コミュニティ上で電源OFF中のバッテリー放電が報告されたハードウェア版があります。ただし、すべてのLiteVNA64が同じ挙動をするという意味ではありません。ハードウェアRevによって状況が異なるため、長期間保管する場合は残量を確認し、使用予定の前に充電状態を確認しておくと安心です。
LiteVNAについても販売元によって付属品や表記が異なることがあります。ZeenKo版と同等の仕様を求める場合は、単に商品名だけを見るのではなく、メーカー、ハードウェア版、周波数範囲、付属キャリブレーションキットを確認してください。
プロ用途も視野に入れるならVNA6000
ここからは価格帯も目的も少し変わります。
NanoRFEのVNA6000は、50kHz~6GHzをカバーする2ポートのポータブルVNAです。NanoRFEではVNA6000を「NanoVNA V3」世代として位置付けており、アンテナだけでなく、フィルタ、デュプレクサ、アンプなどの測定も想定されています。
VNA6000で重視されているのは、単に6GHzまで測定できることではありません。温度補償によるドリフト低減、低いトレースノイズ、測定再現性の向上、IF帯域幅の調整など、測定結果を安定して得るための性能が強化されています。
NanoRFEの公式仕様では、VNA6000-Aの最大ダイナミックレンジは95dB、VNA6000-Bは最大110dBです。特にVNA6000-Bでは、5.8GHzで110dBという値が示されています。
さらに、測定再現性は代表値0.1dB未満、重量は約300gとされています。大型の据え置き型VNAとすべての面で同等という意味ではありませんが、小型・可搬型でありながら高いダイナミックレンジや測定再現性を求める用途では、H4やNanoVNA-F V3とは明確に狙いの異なるモデルです。
たとえば、アンテナのSWRや共振周波数を確認することが中心なら、VNA6000の性能を十分に使い切れない可能性があります。その用途なら、H4やLiteVNA64、NanoVNA-F V3など、より購入しやすいモデルでも対応できます。
一方、フィルタの阻止帯域、デュプレクサのアイソレーションなど、信号が大きく減衰した領域まで確認したい場合は話が変わります。こうした測定ではダイナミックレンジやトレースノイズ、再現性が重要になるため、VNA6000へ価格差を払う意味が出てきます。
この違いを理解しておくと、「NanoVNA-F V3もVNA6000も6GHzまで測れるのに、何が違うの?」という疑問も分かりやすくなります。最高周波数だけを見ると似ていますが、VNA6000はより高いダイナミックレンジや安定した測定性能を重視した機種です。
VNA6000にはAとBがあり、どちらも50kHz~6GHzをカバーします。大きな違いの一つがダイナミックレンジで、VNA6000-Aは最大95dB、VNA6000-Bは最大110dBです。
アンテナや一般的なRF部品の測定だけでなく、より深い減衰量まで確認したい場合はVNA6000-Bが有利です。一方、そこまで大きなダイナミックレンジを必要としないのであれば、VNA6000-Aでも十分な用途は多いでしょう。価格差だけではなく、実際にどの程度の減衰量まで測定したいのかで選ぶことが大切です。
VNA6000の公式販売ルート
VNA6000については、NanoRFEが公式購入先を案内しています。
現在、NanoRFE公式サイトでは「NanoRFE Web Store」と「Tindieの公式ストア」が公式販売先として掲載されています。正規品であることを最優先するなら、まずはこれらの公式販売ルートから購入するのが確実です。
AmazonではAURSINC取扱いのVNA6000-Aも確認できる
「海外の公式ストアではなくAmazonで購入したい」という場合は、AURSINCが取り扱っている「NanoRFE VNA6000-A」も候補になります。
AURSINCの公式サイトにも「NanoRFE VNA6000-A」が掲載されており、50kHz~6GHzの測定範囲、最大95dBのダイナミックレンジなど、NanoRFE公式VNA6000-Aと整合する仕様が案内されています。
Amazonの商品ページでは複数のモデルがバリエーションとしてまとめられることがあります。購入する場合は、「NanoRFE VNA6000-A」が選択されていることを確認し、販売元や商品仕様も注文前にチェックしてください。
また、この記事で紹介しているVNA6000-Aの最大95dBなどの性能値は、NanoRFE公式VNA6000-Aの仕様です。Amazon上の別モデルや外観の似た製品へ、そのまま当てはめないように注意してください。
用途に合わせたNanoVNAの種類の選び方
ここまで各モデルの特徴を見てきましたが、最終的に大切なのはスペック競争ではありません。測りたいものに必要な性能を満たしているかどうかです。
HF・144MHzのアマチュア無線ならH4が選びやすい
3.5MHz帯や7MHz帯などのHFアンテナ、50MHz帯、144MHz帯を自作・調整することが中心なら、NanoVNA-H4はかなり選びやすい機種です。
これらはH4の基本波領域に入っているため、H4の得意な使い方と合っています。

アンテナ調整では、単にSWRの最低値だけを見るのではなく、共振点が目的の周波数に来ているか、帯域幅がどれくらいあるか、インピーダンスが50Ωからどのように外れているかを見ると、NanoVNAを使う意味が一気に大きくなります。
普通のSWR計では「SWRが1.5だった」という結果しか分からなくても、NanoVNAなら周波数を掃引して、「少し低い周波数で共振しているからエレメントを短くしよう」といった判断につなげられます。ここがVNAの面白いところですよ。
アンテナを調整して数字が変わり、その理由をスミスチャートやインピーダンスから考えるようになると、無線工学の教科書で見た内容が急に現実のものとしてつながってきます。
アマチュア無線を単なる交信だけでなく、アンテナや電波そのものを楽しむ趣味として考えている方は、現代のアマチュア無線は何が楽しい?その魅力と始め方を徹底解説も参考にしてみてください。
430MHzをどこまで追い込むかでH4とV2を選び分ける
430MHz帯は少し悩みどころです。
H4でも430MHzは測定範囲に入っており、アンテナの共振点やSWRを確認する用途で使えます。しかし、430MHzはH4の300MHz以下の基本波領域から外れています。
そのため、「430MHzのアンテナを調整したいからH4は使えない」というほどではありませんが、「430MHzでもHFとまったく同じ条件で測れる」と考えるのも違います。
430MHzアンテナのSWR確認が中心で、コストを抑えたいならH4。430MHz以上のRF部品やフィルタ測定まで広げたいならV2 Plus4 Pro。こんな分け方が現実的かなと思います。
2.4GHzのWi-FiアンテナならLiteVNA64が有力
2.4GHz帯のWi-Fiアンテナを測定したい場合は、「LiteVNA64」が有力な選択肢です。50kHz~6.3GHzまで対応しているため、2.4GHz帯はもちろん、将来的に5GHz帯のアンテナ測定へ広げやすいのもメリットです。
Wi-Fiアンテナの調整で主に確認するのは、S11と呼ばれる反射特性です。具体的には、SWR、リターンロス、インピーダンス、共振周波数などを確認し、「アンテナが目的の周波数でうまく整合しているか」を調べます。
LiteVNAの公式マニュアルでは、3GHz未満におけるS11のノイズフロアは-50dB未満とされています。2.4GHz帯はこの範囲に入るため、Wi-FiアンテナのSWRやインピーダンスを確認する用途では十分に検討できる性能です。
一方、NanoVNA V2 Plus4も2.4GHzを測定でき、50kHz~4.4GHzをカバーしています。さらに高いダイナミックレンジを持つことが大きな特徴ですが、この強みが特に生きるのは、アンテナのSWR測定よりもフィルタやデュプレクサなどのS21測定です。
たとえば、フィルタの阻止帯域で信号が何十dBも減衰する部分まで詳しく確認したい場合は、V2 Plus4の高いダイナミックレンジが役立ちます。しかし、2.4GHzのWi-FiアンテナについてSWRや共振周波数を確認することが主目的なら、V2 Plus4の性能を使い切れない可能性があります。
Wi-FiアンテナのSWRやインピーダンス測定が中心なら、価格を抑えながら6.3GHzまで対応するLiteVNA64が選びやすいでしょう。大きな画面で本体操作を重視するならNanoVNA-F V3、アンテナだけでなくフィルタやデュプレクサの深い減衰量まで測定したいならV2 Plus4という選び方が分かりやすいです。
また、LiteVNA64は6.3GHzまで測定できるため、2.4GHz帯から5GHz帯へ測定対象を広げられるのも魅力です。ただし、日本の6GHz帯無線LANは上端が6.425GHzまであるため、LiteVNA64でも6GHz帯Wi-Fiの全範囲をカバーできるわけではありません。「6.3GHz対応だから6GHz帯Wi-Fiをすべて測れる」と考えないように注意してください。
つまり、2.4GHzのWi-Fiアンテナだけを測定するために、より高価なV2 Plus4を優先して選ぶ必要性はそれほど高くありません。まずはアンテナ測定が中心なのか、それともフィルタなどのRF部品測定まで行いたいのかを決めてから選ぶと、必要以上に高価なモデルを購入せずに済みます。
5.8GHzのドローンや無線機器ならLiteVNA64かNanoVNA-F V3
5.8GHz帯のFPV関連アンテナや、5GHz台のRF部品を測りたい場合は、V2 Plus4の4.4GHzでも届きません。
ここでは6GHz付近まで測定できるLiteVNA64やNanoVNA-F V3が候補になります。
携帯性とmicroSDによる保存を重視するならLiteVNA64。4.3インチ・800×480の画面で本体操作を重視するならNanoVNA-F V3。さらにダイナミックレンジや測定再現性まで求めるならVNA6000、という順番で考えると整理しやすいでしょう。

「6GHz対応」でも日本の6GHz Wi-Fi帯を全部測れるとは限らない
ここはNanoVNAをWi-Fi用途で検討している方に、ぜひ知っておいてほしいところです。
製品ページに「6GHz対応」と書かれていると、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7で使う6GHz帯を丸ごと測定できそうに見えますよね。
しかし、日本の6GHz帯無線LANでは5,925MHz~6,425MHzが使用されます。
一方、NanoVNA-F V3とVNA6000の測定上限は6.0GHzです。LiteVNA64は6.3GHzです。
つまり、NanoVNA-F V3やVNA6000は日本の6GHz帯無線LANの上側をカバーできません。LiteVNA64も6.3GHzまでなので、6,425MHzの上端までは届きません。
これはかなり見落としやすいポイントです。
「5.8GHzを測りたい」のか、「Wi-Fiの6GHz帯の一部を見たい」のか、「日本で使われる6GHz帯の上端まで含めてアンテナ特性を評価したい」のかで、必要な測定器は変わります。
日本の6GHz帯やWi-Fi 7について詳しく知りたい場合は、Wi-Fi7は意味ない?必要性を解説も参考にしてください。
日本の6GHz帯無線LANを5,925~6,425MHzまで通して評価したい場合、少なくとも6.425GHz以上まで仕様上カバーするVNAが必要です。「6GHz VNA」という商品名だけで判断せず、必ず測定上限の数字まで確認してください。
フィルタやデュプレクサは最高周波数よりダイナミックレンジを見る
NanoVNAをアンテナアナライザーとして使う場合と、フィルタ測定に使う場合では、注目すべきスペックが少し変わります。

アンテナでは主にS11を使い、反射係数、リターンロス、SWR、インピーダンスなどを確認します。
一方、フィルタではS21を使って、信号がどれだけ通過するかを確認します。
通過帯域では数dB程度の差でも、阻止帯域では数十dB、用途によってはそれ以上まで信号が減衰します。その領域まで見たい場合、単に「6GHzまで測れます」というスペックよりも、何dB下まで安定して測れるのかが重要です。
そのため、3GHz以下のフィルタを測定するのに、必ずしも6GHz対応機が一番向いているとは限りません。
V2 Plus4やPlus4 Proのようにダイナミックレンジを重視したモデル、さらに高い測定性能が必要ならVNA6000という選び方が合理的です。

クローン品や出所の分からないNanoVNAをどう見分ける?
NanoVNAを購入するときに難しいのが、同じ名前の製品が複数の販売元から出ていることです。ただし、ここでは「クローン品=すべて偽物」と単純化しない方が正確です。
もともとのNanoVNAにはオープンソースとして公開されたハードウェアやソフトウェアがあり、それをもとにした派生製品も存在します。設計を利用していること自体と、製品の品質が低いことは別の話です。
問題になるのは、同じモデル名や非常に似た外観を使いながら、内部部品、RFシールド、電源回路、ファームウェアなどが異なり、本来の仕様を満たしていない製品です。
NanoRFEはV2系コピー品について、RFシールドの省略、低ノイズ電源部品の変更、独自ファームウェア、実際の性能を超える周波数表記などに注意するよう案内しています。
特にV2系列では、「V2」「S-A-A-2」と書いてあるだけで現在のNanoRFE V2 Plus4と同じ性能だと思わないことが大切です。
購入前に確認したい5つのポイント
- 開発元・メーカー・販売元が明記されているか
- H4、V2_2、V2 Plus4など正確なハードウェア名やRevが分かるか
- 周波数範囲だけでなくダイナミックレンジなどの仕様が確認できるか
- 公式または互換性が確認されたファームウェアへ更新できるか
- OPEN・SHORT・LOAD・THRUなど必要なキャリブレーション器具が付属するか
以前は「黒い基板なら避ける」「特定のロゴがなければ偽物」といった簡単な見分け方も見かけましたが、外観だけで品質を確実に判断するのは難しいです。
むしろ、モデル名、開発元、ハードウェアRev、公式ファームウェアとの互換性、販売店の説明がきちんと一致しているかを見る方が確実です。
NanoVNAはもともと低価格な測定器なので、数千円の差が気になってしまいます。ただ、測定器は「数字が表示されればよい」ものではありません。測った結果を信用できるかどうかが本質です。少し安い製品を選んだ結果、測定値がおかしい原因がアンテナなのかNanoVNAなのか分からなくなると、かえって遠回りになります。
正確な測定に必要なキャリブレーションを初心者向けに整理
どのNanoVNAを選んでも、避けて通れないのがキャリブレーション(校正)です。ここは最初こそ面倒に感じますが、VNAを使ううえではかなり重要です。
VNAは本体のコネクタ位置ではなく、実際に測りたい位置を基準面として測定したい機器です。
ところが、本体とアンテナの間には測定ケーブルや変換コネクタがあります。それらにも損失、位相遅延、わずかな反射があります。その影響を含んだまま測ると、「アンテナの特性」を測っているつもりが、「ケーブル+変換コネクタ+アンテナの特性」を見ていることになります。
そこでキャリブレーションを行い、測定基準面をケーブルの先端まで移動させます。

S11だけならOPEN・SHORT・LOAD
アンテナのSWRやインピーダンスなど、反射特性S11だけを測るのであれば、基本となるのは次の3つです。
- OPEN:開放
- SHORT:短絡
- LOAD:50Ω終端
これがSOLキャリブレーションです。
S21まで測るならTHRUも必要
フィルタやケーブルの通過特性S21まで測定したい場合は、OPEN・SHORT・LOADに加えて、ポート1とポート2を接続するTHRUを使います。
つまり、S11だけならSOL、S11とS21を測るならSOLTと覚えておくと分かりやすいですよ。
NanoRFEのV2マニュアルでも、S11だけならSOL、S11とS21ならSOLTを使用する手順が案内されています。
出典:NanoRFE「NanoVNA V2 User Manual」
周波数範囲や測定ケーブルを変えたらキャリブレーションをやり直す
初心者がやりやすい失敗が、「一度キャリブレーションしたから、ずっとそのままでよい」と考えてしまうことです。
測定する周波数範囲を大きく変更した場合や、測定ケーブルを変更した場合、変換アダプタを追加・取り外しした場合などは、測定条件が変わります。
特にケーブルやアダプタを変更したときは、キャリブレーション面そのものが変わってしまいます。
測定前に「今日は7MHzだからこの範囲」「今日は430MHzだからこの範囲」というように、実際に見る周波数帯へ絞ってキャリブレーションする方が扱いやすいです。
必要以上に50kHz~数GHzまで一気に広い範囲を表示するより、見たい周波数周辺へ範囲を絞る方が変化も読み取りやすくなります。
NanoVNA系ではSMAコネクタを採用した機種が多い一方、日本のアマチュア無線アンテナではM型(UHF型)がよく使われます。そのため、SMAとM型を変換するアダプタが必要になる場面があります。
HF帯では小さな影響に見えても、周波数が上がるほど変換コネクタやケーブルの特性を無視しにくくなります。
特に430MHzより上、さらに2.4GHzや5GHz台を測る場合は、変換アダプタを何段も重ねるのは避けたいところです。できるだけ変換段数を減らし、測定する周波数に対応したコネクタやケーブルを使ってください。
そして大切なのが、変換アダプタや測定ケーブルを取り付けた状態で、その先端を基準面としてキャリブレーションすることです。高価な変換コネクタを買うだけではなく、「どこでキャリブレーションしたか」までセットで考えると測定の意味が分かりやすくなります。
NanoVNAを無線機の送信端子へそのまま接続しない
もう一つ、初心者の方にぜひ覚えておいてほしい注意点があります。
NanoVNAは送信電力を測るためのパワーメーターではありません。無線機を送信状態にして、その出力をNanoVNAの入力へ直接入れるような使い方は避けてください。VNA側の許容入力を超えると故障する可能性があります。
許容入力レベルは機種ごとに異なります。たとえばNanoVNA-F V3ではRF入力の最大値が公式仕様に記載されており、VNA6000にも最大入力条件があります。
アンプなど能動回路を測る場合も同様です。必要に応じてアッテネータを使用するなど、VNAの入力レベルを超えない構成にする必要があります。
アンテナ、フィルタ、ケーブルなど受動部品の測定から始めると分かりやすいです。無線機、アンプ、発振器など自ら信号を出す回路を接続するときは、必ず各NanoVNAの最大入力仕様を確認してください。
迷ったときは3つの質問でNanoVNAを選ぶ
モデルが多すぎてまだ迷うという方は、次の3つだけ順番に考えてみてください。

1. 一番高い測定周波数は何MHz・何GHzか
まず確認したいのが、自分が測定したい一番高い周波数です。NanoVNAはモデルによって測定できる周波数の上限が大きく違うため、ここを決めるだけでも候補をかなり絞れます。
7MHzや144MHz帯のアンテナ測定なら、NanoVNA-H4が得意とする領域です。430MHz帯もH4の測定範囲には入りますが、300MHzを超えるため高調波を利用する領域になります。
2.4GHz帯のWi-Fiアンテナを測定する場合は、LiteVNA64、NanoVNA-F V3、NanoVNA V2 Plus4などが候補です。この周波数帯では、単に「測れるかどうか」だけでなく、アンテナ測定が中心なのか、フィルタやデュプレクサまで測定するのかによって最適なモデルが変わります。
さらに5.8GHz帯まで測定したい場合は、6.3GHzまで対応するLiteVNA64や、6GHzまで対応するNanoVNA-F V3などが候補になります。より高いダイナミックレンジや測定再現性を求める場合は、VNA6000も選択肢に入ります。
この段階では「一番高性能な機種」を決める必要はありません。まず必要な周波数をカバーできない機種を候補から外し、そのあとでアンテナ測定なのか、フィルタ測定なのか、価格や携帯性をどこまで重視するのかを比較すると選びやすくなります。
2. アンテナを見るのか、フィルタを見るのか
次に測定対象です。
アンテナのSWRやインピーダンスが中心なら、必要な周波数をカバーする機種を選べば比較的決めやすいです。
一方、フィルタやデュプレクサではS21とダイナミックレンジが重要になります。
「周波数上限だけ高い機種」と「必要な帯域で低いレベルまで測れる機種」は同じではありません。
3. 屋外で単体使用するのか、PCにつないで使うのか
最後は使い方です。
アンテナのところまでNanoVNAを持っていき、本体画面を見ながら調整するなら、画面サイズ、バッテリー、操作ボタン、データ保存機能が効いてきます。
逆に机上でPCへつなぎ、データを保存・比較しながら部品を評価するなら、PCソフトとの連携や測定ポイント数、IF帯域幅などの方が重要になる場合があります。
ここまで決めれば、「一番高性能なNanoVNA」ではなく、「自分に一番合うNanoVNA」がかなり見えてくるはずです。
最適なNanoVNAの種類を選んで電波を「見える化」しよう
NanoVNAの種類について、H4、V2系列、NanoVNA-F V3、LiteVNA64、VNA6000まで比較してきました。
改めて整理すると、NanoVNA選びで大切なのはモデル名の新しさではありません。
- 何MHz・何GHzまで測りたいのか
- アンテナのSWRを見るのか
- フィルタの通過特性まで見るのか
- どの程度のダイナミックレンジが必要なのか
- 屋外へ持ち出すのか
- PCと接続して使うのか
この順番で考えると選びやすくなります。
HF~144MHz帯のアンテナ調整を中心に始めるなら、H4は今でも非常に分かりやすい入口です。
2.4GHzや5GHz帯までアンテナ測定の範囲を広げたいなら、6.3GHzまでカバーするLiteVNA64が有力です。
アンテナ測定だけでなく、4GHz付近までのフィルタやデュプレクサについて、通過特性や深い減衰量まで詳しく確認したいならV2 Plus4。
大きな画面で本体単体の操作性を重視しながら5.8GHz付近まで測定したいならNanoVNA-F V3。
さらに高いダイナミックレンジや測定再現性を必要とする場合は、VNA6000が候補になります。
そして、日本の6GHz帯Wi-Fi全体を評価したい場合は、今回紹介した機種の「6GHz」「6.3GHz」という表記だけでは足りない可能性があります。必要な周波数の上端まで、本当に測定器がカバーしているか確認してください。
私が無線やRFの測定で特に大切だと考えているのは、測定器に表示された数字をそのまま信じるのではなく、「なぜこの値になったのか」を考えることです。
キャリブレーション位置は合っているか。ケーブルを変えていないか。変換コネクタの影響ではないか。測定器の得意な周波数なのか。ダイナミックレンジは足りているのか。
こうした条件を一つずつ整理していくと、目に見えない電波や高周波回路の動きが、少しずつ「見える情報」に変わっていきます。
NanoVNAは、単にSWRの数字を表示する便利グッズではありません。アンテナの共振、インピーダンス、フィルタの通過特性、ケーブルの状態など、これまで目では見えなかった無線の世界を自分で確かめられる測定器です。最初から最上位モデルを買う必要はありません。
まずは自分が測りたい周波数と対象を決め、その条件に合う一台を選んでみてください。それが、買ったあとに「こんなはずじゃなかった」と後悔しないNanoVNA選びにつながります。