第一級陸上無線技術士、通称「一陸技」に挑戦しようと思ったとき、かなり気になるのが「結局、何時間くらい勉強すれば受かるの?」というところですよね。
仕事をしながら受験するなら、なおさらです。半年で狙えるのか、1年くらい必要なのか。それとも文系や電気未経験なら、もっと長く見ておいた方がよいのか。最初の見積もりを間違えると、試験直前になって時間が足りなくなってしまいます。
ただし、一陸技には「全員○○時間勉強すれば合格できる」という標準時間があるわけではありません。電気電子を学んできた人と、三角関数や複素数から復習する人では、同じ一陸技でも必要な時間はかなり変わります。
私自身も第一級陸上無線技術士を取得していますが、一度に4科目すべてに合格したわけではありません。科目合格制度を利用しながら3回受験し、最後まで残ったのは無線工学Bでした。
だからこそ、一陸技では「何時間勉強するか」だけでなく、「自分はどこから勉強を始める必要があるのか」を最初に見極めることがかなり大切だと感じています。
この記事では、文系・初学者、非電気系の理系、電気電子系、一陸特取得者など、スタート地点ごとの勉強時間の目安を整理します。そのうえで、社会人でも続けやすい勉強法、過去問の使い方、参考書の選び方までまとめていきます。
この記事でわかること
- 一陸技の勉強時間を自分の前提知識から見積もる方法
- 文系・理系・電気系・一陸特取得者ごとの学習時間の目安
- 無線工学の基礎・工学A・工学B・法規の時間配分
- 社会人が一発合格と科目合格のどちらを選ぶべきか
- 過去問を使って勉強時間を減らす方法
- 一陸技の参考書を買いすぎずに選ぶ方法
一陸技の勉強時間はどれくらい?まず結論
一陸技の合格に必要な勉強時間は、数学、電気回路、電磁気、無線工学にどれくらい触れてきたかによって大きく変わります。

日本無線協会が「一陸技は標準○○時間」と公表しているわけではないため、ここで紹介する時間は合格を保証する数字ではありません。受験計画を立てるための、おおまかな目安として考えてください。
| スタート地点 | 勉強時間の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 電気電子系の大学・高専出身 | 150〜300時間程度 | 回路、複素数、電磁気などの基礎をすでに理解しているなら、過去問中心で進めやすい。 |
| 非電気系の理系 | 400〜600時間程度 | 数学には慣れていても、回路・アンテナ・無線機器の専門知識を補う必要がある。 |
| 一陸特取得者 | 350〜600時間程度 | 無線工学や法規の用語には慣れているが、一陸技では電気回路や電磁気を含めて学習範囲が広がる。 |
| 文系・電気未経験 | 1,000時間以上も想定 | 高校数学、電気回路、電磁気など、一陸技の問題を読むための基礎から積み上げる必要がある。 |
ここで大切なのは、「自分は文系だから1,000時間」「理系だから150時間」と機械的に決めないことです。同じ理系でも、電気電子系と生物系では前提知識がかなり違います。
逆に、文系出身でも仕事や趣味で電子回路を触っていたり、アマチュア無線を通して電波やアンテナに詳しかったりすれば、完全な初学者より早く進められるでしょう。
一陸技の勉強時間は「学歴」よりも、「過去問を見たときに何が分かるか」で判断する方が実用的です。
勉強を始める前に一陸技の過去問を1回見てみる
まだ勉強を始めていなくても、日本無線協会が公開している一陸技の問題を一度見てみてください。正解できるかどうかは、この段階では気にしなくて大丈夫ですよ。
確認したいのは、問題文や解説を読んだときに「どこから分からないのか」です。
- 対数やデシベルの計算方法が分からない
- sin、cosを見ただけで止まってしまう
- 複素数の「j」が何を意味するのか分からない
- 抵抗、コイル、コンデンサの交流での振る舞いが分からない
- インピーダンスという言葉自体がよく分からない
- アンテナや変調方式の名称は聞いたことがある
- 計算方法は分からなくても、何を聞かれているかは分かる
上の前半に当てはまる項目が多いなら、いきなり一陸技の過去問を暗記するより、数学や電気回路を少し戻った方が早いです。
反対に、問題を見て「大学でやった」「式は忘れたけれど意味は分かる」と感じるなら、最初から過去問中心で進めてもよいでしょう。
一陸技の勉強時間を知識レベル別に考える
文系や初学者は1,000時間以上かかることもある
文系出身の方や、電気・電子をほとんど学んだことがない方は、かなり余裕を持った計画を立てた方がよいです。目安としては、1,000〜1,500時間ほどを想定しておくと、基礎からじっくり積み上げやすくなります。
ただし、これは「文系なら必ず1,500時間必要」という意味ではありません。どこまで数学を覚えているか、毎日どれくらい集中できるか、過去問との相性などで大きく変わります。
初学者に時間がかかりやすい理由は、一陸技そのものを勉強する前に、問題を理解するための数学や電気回路を身につける必要があるからです。
特に「無線工学の基礎」「無線工学A」「無線工学B」では、公式を覚えるだけではなく、式を変形したり、単位をそろえたり、複数の考え方を組み合わせたりする問題が出てきます。
完全な初学者の場合、最初の数百時間は無線工学の暗記ではなく、数学や電気回路の基礎を身につける期間になるかもしれません。特に次の3つは何度も登場します。
- 対数(log):dBの計算で頻繁に使います。10倍、100倍とdBの関係を感覚的につかめるとかなり楽になります。
- 三角関数(sin、cos):交流、位相、波、アンテナなどの理解につながります。
- 複素数(j):交流回路やインピーダンスを扱うときの重要な道具です。
初学者がつまずきやすいのは、いきなり過去問を開き、解説に出てくる数式そのものが読めないケースです。「解説を読んでも、その解説の意味が分からない」という状態ですね。
この段階で何時間も同じ問題と格闘しても、なかなか前に進みません。能力の問題というより、まだ必要な道具を習っていないだけです。
過去問の解説が読めないなら、数週間〜数か月だけ数学と電気回路へ戻る。一見すると遠回りですが、その後の無線工学A・Bまで考えると、こちらの方が結果的に早く進めることがあります。
電気電子系の理系なら150〜300時間程度から狙える
大学や高専などで電気電子工学を学んだ経験がある方は、一陸技との相性がかなり良いです。知識がある程度残っているなら、150〜300時間程度をひとつの計画ラインとして考えられます。
理由は、一陸技で時間がかかりやすい電気回路、交流回路、電磁気、半導体、複素数などをすでに学んでいるからです。
例えば、キルヒホッフの法則、テブナンの定理、共振回路、インピーダンスといった言葉を見て「昔やったな」と思えるなら、ゼロから理解する必要はありません。
忘れていたとしても、一度理解した内容を思い出す学習と、初めて理解する学習では必要な時間が違います。
このタイプの方は、参考書を最初から読み込むより、早めに過去問へ入った方が効率的です。分からなかったところだけ参考書へ戻り、知識の穴を埋めていく方法が合いやすいでしょう。
回路や電磁気の基礎が残っているなら、入門書からやり直す必要はありません。まず過去問を解いてみて、「忘れている部分」と「一陸技特有の知識」を切り分ける方が、勉強時間を使いやすいですよ。
非電気系の理系は400〜600時間程度を見ておく
同じ理系でも、機械、化学、生物、情報系など、大学で電気回路をほとんど扱っていない場合は少し事情が変わります。
数学そのものには比較的慣れているため、式変形や三角関数で完全に止まることは少ないかもしれません。一方で、インピーダンス、変調、定在波、アンテナ利得など、電気・無線特有の考え方を新しく覚える必要があります。
そのため、電気電子系より長めの400〜600時間程度を見ておくと計画を立てやすいでしょう。
数学が得意でも、交流回路や電磁気を初めて学ぶなら一定の時間は必要です。特に無線工学Bでは、アンテナの指向性や電波伝搬など、式だけではイメージしにくい内容も出てきます。
無線工学Bが苦手になってきた場合は、別記事の陸上無線技術士の無線工学B対策で、アンテナや電波伝搬をどう勉強するか詳しく整理しています。
一陸特取得者でも一陸技は別試験と考えた方がよい
すでに第一級陸上特殊無線技士、いわゆる一陸特を持っている方なら、無線工学や法規の用語に触れた経験があります。そのため、完全な初学者より入りやすいのは間違いありません。
目安としては350〜600時間程度から考え、自分の数学・回路知識によって増減させる方法が現実的です。
ただし、「一陸特を持っているから、一陸技も少し勉強すれば受かる」と考えるのは少し危険です。
一陸技は、無線工学の基礎、無線工学A、無線工学B、法規の4科目です。電気回路、電磁気、半導体、送受信機、変復調、アンテナ、電波伝搬まで、かなり広く学ぶことになります。
- 無線用語に慣れている:周波数、変調、電波、無線設備といった言葉に抵抗が少ない。
- 法規を学んだ経験がある:電波法関係の文章を読むこと自体には慣れている。
- 無線工学の全体像を想像しやすい:完全な初学者より新しい内容を既存知識と結びつけやすい。
一方で、一陸技では数学・回路の比重がかなり大きくなります。「知っている単語が多い」ことと、「一陸技の計算問題を解ける」ことは分けて考えた方がよいでしょう。
一陸技と一陸特そのものの違いが曖昧な場合は、陸上無線技術士と陸上特殊無線技士の違いも先に確認しておくと、なぜ試験内容に差があるのか分かりやすいですよ。
一陸技4科目の勉強時間は均等に分けなくてよい

一陸技は4科目ありますが、勉強時間を単純に25%ずつ分ける必要はありません。得意不得意にもよりますが、理解に時間がかかる科目へ多めに振った方が効率的です。
私なら、初学者に近いほど「無線工学の基礎」を重めにします。基礎を理解すると、工学Aや工学Bで出てくる式や回路も読みやすくなるからです。
| 科目名 | 配分の一例 | 学習の考え方 |
|---|---|---|
| 無線工学の基礎 | 35% | 全体の土台。電気回路、電磁気、半導体などを扱う。計算問題の理解に時間をかける価値が大きい。 |
| 無線工学A | 25% | 無線機器・通信方式。変復調、送受信機、デジタル通信、測定などを、ブロック図と結びつけて覚える。 |
| 無線工学B | 25% | アンテナ・電波伝搬。公式だけでなく、図と物理現象を結びつける。計算ミスにも注意したい。 |
| 法規 | 15% | 条文・制度の理解と暗記。工学よりスキマ時間を使いやすいため、通勤時間などへ分散しやすい。 |
もちろん、この35:25:25:15は公式の推奨割合ではありません。あくまで学習計画を作るための一例です。
例えば無線機器の設計経験がある人なら工学Aを減らせますし、アンテナを仕事で扱っている人なら工学Bにそれほど時間を使わなくてもよいでしょう。
大切なのは「4科目だから4等分」ではなく、過去問の正答率が低い科目へ時間を移していくことです。
無線工学の基礎は後回しにしない方がよい
「無線工学の基礎」という名前を見ると、4科目の中では簡単そうに感じますよね。しかし、ここで扱う内容は一陸技の工学科目を理解するための土台です。
例えば、無線工学Bで扱う給電線やインピーダンス整合を理解するには、交流回路や複素数の考え方が役立ちます。工学Aの増幅回路やフィルタも、回路の基礎がある方が理解しやすくなります。
基礎を飛ばして工学A・Bへ行くと、分からない言葉が出るたびに基礎へ戻ることになります。この「行ったり来たり」が増えると、トータルの勉強時間も伸びてしまいます。
そのため、電気未経験の方ほど、最初に基礎へしっかり時間を使う方がおすすめです。
一陸技の勉強期間は何か月必要?1日2時間で計算

勉強時間だけではイメージしにくいので、1日平均2時間を確保できるとして期間へ置き換えてみましょう。
実際には仕事や家庭の予定で勉強できない日もあります。そのため、計算結果ぴったりではなく、少し長めに見ておく方が安心です。
- 150時間:約2.5か月
毎日平均2時間なら約75日です。電気電子系で過去問を見てもある程度内容が分かる人なら、3〜4か月程度の短期計画も現実的です。 - 400時間:約6〜7か月
約200日必要です。半年程度前から始め、前半で基礎、後半で工学A・Bと法規を仕上げるイメージになります。 - 600時間:約10か月
社会人なら半年で詰め込むより、余裕を持って次回または次々回の試験まで見た方が続けやすいでしょう。 - 1,000時間:約1年4〜5か月
毎日2時間をかなり高い割合で継続した場合の数字です。完全な初学者なら、一発合格だけにこだわらず、科目合格制度も考えた方が現実的です。
社会人なら、残業、出張、体調不良、家族の予定などで勉強できない日は普通にあります。7日間すべてを勉強日として計算するより、週1日程度は最初から予備日にしておくと予定が崩れにくいですよ。
1週間単位で勉強時間を管理すると続けやすい
「毎日2時間」と決めると、1日できなかっただけで計画が崩れたように感じてしまいます。社会人なら、1日単位より1週間単位で考える方法もおすすめです。
例えば「週10時間」と決めておけば、平日に忙しい日があっても週末で調整できます。
| 曜日 | 勉強時間の例 | 内容 |
|---|---|---|
| 月〜金 | 1時間×5日 | 過去問、法規、公式確認など |
| 土曜日 | 3時間 | 計算問題、苦手科目の理解 |
| 日曜日 | 2時間 | 1週間の復習、間違えた問題の解き直し |
これで週10時間です。半年続ければ200時間を超えてきますし、1年なら500時間前後を確保できます。
一陸技は数日だけ猛烈に勉強するより、過去問を何度も解き直す方が重要です。特に仕事をしながら受験するなら、「続けられる量」で組むことを優先してください。
一陸技の勉強時間を短縮するなら過去問を中心にする
ここまで勉強時間の目安を紹介しましたが、「500時間なんてなかなか取れない」と感じる方もいるでしょう。
そこで重要になるのが、勉強時間そのものを増やすことではなく、試験に必要なところへ時間を集中させることです。
一陸技で最初に軸にしたいのは、やはり過去問です。
独学で一番避けたいのは「分からない1問に何時間も使うこと」
独学では、先生が「ここは後でいいですよ」と言ってくれません。そのため真面目な人ほど、分からない問題に出会うと、完全に理解するまで先へ進めなくなることがあります。
難しい数式変形を1時間考え、それでも分からず別のサイトを調べ、さらに関連する理論を調べる。気づけば1問だけで2〜3時間。これは一陸技ではかなり苦しい進め方です。
もちろん理解することは大切ですが、初回から100%を狙う必要はありません。
解説を読んでも理解できなければ、印を付けて次へ進みましょう。他の分野を勉強したあとに戻ると、以前は意味不明だった式が急に分かることがあります。一陸技は科目同士の知識がつながっているためです。
1周目の目的は「全部理解すること」ではなく、「一陸技で何が出るのかを知ること」。2周目、3周目で理解を深くしていけば十分です。
「テキスト→過去問」より「過去問→必要なところだけテキスト」
一陸技の参考書は内容がかなり多いです。最初のページから最後まで全部理解してから過去問へ行こうとすると、問題演習を始めるまでに何か月もかかってしまうことがあります。
そこで、ある程度の基礎がある人なら、先に過去問を見る方法がおすすめです。

- 過去問を解く
- 分からなければ解説を見る
- 解説でも理解できなければ参考書へ戻る
- 数日後に同じ問題をもう一度解く
- 途中式まで自分で再現できるか確認する
この流れなら、自分が分かっているところを何時間も読み直さずに済みます。
初学者の場合も「いきなり正解する」必要はありません。問題を見る→解説を見る→分からない単元を把握する、という使い方なら最初から過去問を利用できます。
過去問は答えではなく「解き方」を覚える
一陸技では、過去問演習がかなり重要です。しかし、選択肢の番号だけ覚えてしまう勉強法はおすすめしません。
問題を見た瞬間に「これは3番だった」と答えられても、数値や回路の条件が変わったときに対応できないからです。
計算問題なら、少なくとも次の状態を目指してください。
- 使う公式を自分で選べる
- なぜその公式を使うのか説明できる
- 単位をそろえられる
- 途中式を自分で書ける
- 数値が変わっても計算できる
文章問題なら、正解の選択肢だけでなく「ほかの選択肢のどこがおかしいのか」を確認すると理解が深まります。
1周目は問題を知る、2周目は解き方を覚える、3周目は自力で再現する。このくらい役割を分けると進めやすいです。苦手問題だけ4周目、5周目へ回せば、得意問題に使う時間も減らせます。
日本無線協会では直近の国家試験問題と解答が公開されています。市販の過去問集だけで終わらせず、受験前には公式サイトで現在公開されている問題も確認しておきましょう。
一陸技のおすすめ参考書は「全部買う」必要はない
一陸技の勉強時間を短縮したいなら、教材選びも重要です。ただ、ここでやりがちな失敗が「不安だから参考書を全部買う」ことなんですよね。
本棚に教材が増えるほど、安心感はあります。しかし、それぞれを少しずつ読むだけになってしまうと、問題を自力で解く時間が減ってしまいます。
基本的には、過去問集を1冊メインに置き、過去問の解説では理解できない科目だけ参考書を追加するという形が使いやすいと思います。
| 今の状態 | まず選ぶ教材 |
|---|---|
| 何から始めるか分からない | 過去問集1冊 |
| 回路・電磁気で止まる | 過去問集+無線工学の基礎 |
| 変調・送受信機が苦手 | 過去問集+無線工学A |
| アンテナ・伝搬が苦手 | 過去問集+無線工学B |
| 過去問を終えて演習量が足りない | 精選問題集を追加 |
第一級陸上無線技術士試験 吉川先生の過去問解答・解説集
まず過去問中心で進めたい人に向いているのが、「第一級陸上無線技術士試験 吉川先生の過去問解答・解説集」です。
一陸技では、最初に出題範囲を把握することが大切です。過去問を科目別に確認しながら、頻繁に目にするテーマや、自分がまったく分からない分野を把握する用途に向いています。
特に電気系の知識がある方なら、最初からテキストを読み込むより、過去問を解き、分からなかった部分だけ補う方が進めやすいでしょう。
一方、過去問の解説を読んでも数式そのものが理解できない場合は、過去問集だけで無理に進めず、次に紹介する基礎用教材を併用した方がよいです。
一陸技 無線工学の基礎 完全マスター
数学、電気回路、電磁気、半導体あたりで止まってしまう人には、「一陸技 無線工学の基礎 完全マスター」が補強用として使いやすいです。
無線工学の基礎は、名前こそ「基礎」ですが、簡単な科目という意味ではありません。むしろ、工学A・Bを理解するための土台になる重要な科目です。
ただし、この本を最初から最後まで一字一句理解してから過去問へ進もうとすると、かなり時間がかかります。
私なら、過去問を解く→分からない単元を確認する→該当ページへ戻る、という辞書に近い使い方をします。
交流回路、デシベル、半導体、電磁気などで何度も失点する人には特に向いています。逆に、そのあたりを大学や仕事ですでに理解しているなら、無理に購入しなくてもよいでしょう。
一陸技 無線工学A【無線機器】完全マスター
変調方式、送受信機、デジタル通信、測定機器などが苦手なら、「一陸技 無線工学A【無線機器】完全マスター」を補助教材として使う方法があります。
無線工学Aは、用語だけを覚えるより「信号がどこから入り、どの回路で何が行われ、どのように出ていくのか」を理解した方が覚えやすい科目です。
OFDMなどのデジタル通信、変復調、受信機の構成、雑音、測定器などは、過去問の数行の解説だけではイメージしにくいことがあります。
過去問を解いていて「答えは覚えたけれど、装置の中で何をしているのか分からない」と感じる項目が増えてきたら、追加を検討するとよいでしょう。
一陸技 無線工学B【アンテナと電波伝搬】完全マスター
アンテナ、給電線、電波伝搬が苦手な人には、「一陸技 無線工学B【アンテナと電波伝搬】完全マスター」が候補になります。
無線工学Bは、公式を覚えるだけでなく、アンテナの形、指向性、給電線上の電圧・電流、電波が空間を伝わる様子を結びつけて考える必要があります。
私自身も、一陸技では無線工学Bが最後まで残りました。内容を理解していたつもりでも、単位換算や対数計算で失点した経験があり、単純な丸暗記だけでは安定しにくい科目だと感じています。
八木アンテナ、パラボラアンテナ、定在波比、給電線、電離層伝搬など、過去問の文章だけではイメージできない項目を補う教材として使うとよいでしょう。
無線工学Bについては、参考書を読むだけでなく図と計算を結びつけることが大切です。詳しい学習方法は無線工学Bの苦手克服と勉強法でも解説しています。
第一級陸上無線技術士試験問題集 第4集 合格精選360題
過去問を一通り解き終え、「同じ問題なら解けるけれど、少し形を変えられると不安」という段階まで来たら、「第一級陸上無線技術士試験問題集 第4集 合格精選360題」で演習量を増やす方法があります。
私は一陸技を受験したとき、前の版にあたる「第3集 合格精選340題」を実際に使いました。
過去問だけでは演習量が足りないと感じた分野を何度も解き直し、苦手な問題の解法を確認するために使っていました。教材を何冊も広げるというより、弱点を埋めるための問題集という位置づけです。
今から新しく購入するなら、刊行時期の新しい第4集を候補にする方が自然でしょう。ただし、収録範囲や版は購入前に商品ページで確認してください。
使うときは、最初から360題を全部同じ回数だけ解く必要はありません。間違えた問題、時間がかかった問題、答えは合ったものの解法に自信がない問題へ印を付け、そこを重点的に繰り返す方が効率的です。
◆私が使用したのは第3集
私は第3集を繰り返し解き、苦手分野の演習量を増やしました。すでに第3集を持っているなら、必ずしも買い直す必要はありません。手持ちの問題集をしっかり使い込み、日本無線協会が公開する試験問題で近年の内容を確認する方法でもよいと思います。
市販の問題集だけで最新の試験内容をすべて確認できるとは限りません。受験前には、日本無線協会が公開している現在の試験問題・解答も確認してください。
結局、最初に何冊買えばよい?
完全な初学者や一陸特からステップアップする方なら、私はまず過去問集1冊から始めます。
そして、無線工学の基礎で何度も止まるなら「無線工学の基礎 完全マスター」を追加。工学AやBだけ理解できないなら、その科目の完全マスターを追加するという順番です。
理系・電気系の知識がある方なら、最初から完全マスターシリーズを全部そろえる必要性はさらに低くなります。
参考書は「最初から全部読む本」ではなく、「過去問で分からなかったところへ戻る場所」と考えると、教材費も勉強時間も増えすぎにくいです。
- 過去問集を1冊選ぶ
- まず実際に解いてみる
- 解説でも理解できない科目を確認する
- 必要な科目だけ参考書を追加する
- 演習不足を感じた段階で精選問題集を追加する
最初から5冊買うより、自分の弱点が見えてから追加する方が失敗しにくいですよ。
無線工学の基礎に時間をかけると後半が楽になる
一陸技の勉強時間を短縮したいと考えると、基礎を早く終わらせて工学A・Bへ進みたくなります。しかし、初学者ほどここは急がない方がよいです。
無線工学の基礎では、電気回路、電子回路、電磁気、半導体などを扱います。これらは単独で終わる知識ではなく、ほかの工学科目でも繰り返し使います。
例えば工学Aでは、増幅、発振、変復調、フィルタなどを理解するときに回路の知識が必要です。
工学Bでは、給電線やインピーダンス、アンテナの電界・磁界などを考えるときに、交流や電磁気の知識が役立ちます。
基礎が曖昧だと、そのたびに昔のページへ戻ることになります。これが積み重なると、「勉強しているのに全然先へ進まない」という状態になりやすいです。
初学者にとって基礎へ時間を使うことは遠回りではなく、その後の手戻りを減らすための先行投資と考えてください。
社会人は一発合格と科目合格のどちらを選ぶべき?
一陸技は、無線工学の基礎、法規、無線工学A、無線工学Bの4科目です。仕事をしながら4科目すべてを同時に仕上げるのは、かなり大変ですよね。
そこで知っておきたいのが科目合格制度です。
日本無線協会の案内では、同一資格の国家試験で合格点を取った科目について、その試験科目が行われた月の翌月初めから起算して3年以内に実施される同一資格の国家試験で、申請により科目免除を受けられます。
単純に「一度合格すればずっと有効」という制度ではありません。免除期間や申請条件は受験時点の公式情報を必ず確認してください。
一陸技は現在、通常7月期と1月期に実施されています。日程や申請期間、試験地は年度によって変わる可能性があるため、受験前には日本無線協会の案内を確認しましょう。
(出典:公益財団法人 日本無線協会)
一発合格を狙いやすい人
- 電気電子系の基礎知識がある
- 過去問を見て半分程度は内容を理解できる
- 試験まで数か月、安定して勉強時間を確保できる
- 4科目を並行しても混乱しにくい
このような方なら、最初から4科目合格を目指してよいと思います。
特に電気系出身者の場合、基礎科目に必要な時間を抑えられるため、工学A・Bと法規へ早く移れます。
科目合格を使った方がよい人
- 電気や数学から復習する必要がある
- 平日は30分〜1時間程度しか勉強できない
- 仕事の繁忙期がある
- 家事・育児などで勉強時間が不規則
- 試験までに4科目を仕上げるのが難しい
このような方は、一発合格だけを正解にしない方が続けやすいです。
私自身も一度に4科目を合格したわけではなく、科目合格制度を利用しながら3回受験しました。仕事をしながら勉強する場合、試験ごとに残った科目へ集中できるのはかなり助かります。
一方で、受験回数が増えると勉強期間も長くなり、受験のたびに申し込みや試験会場への移動も必要です。そのため、最初から「絶対に分割」と決めるのではなく、試験直前の仕上がりを見て判断してもよいでしょう。
2回に分けるなら「基礎・法規→工学A・B」が分かりやすい

分割して勉強するなら、ひとつの例として「1回目に無線工学の基礎と法規、2回目に無線工学AとB」という組み方があります。
| 受験回 | 中心に勉強する科目 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1回目 | 無線工学の基礎 法規 |
工学全体の土台を作りながら、性質の異なる法規も進める。 |
| 2回目 | 無線工学A 無線工学B |
基礎を学んだ状態で、無線機器・通信方式・アンテナ・伝搬へ進む。 |
| その後 | 残った科目 | 免除条件を確認しながら、未合格科目へ集中する。 |
ただし、これは唯一の正解ではありません。アンテナが得意なら工学Bを先に取ってもよいですし、仕事で無線機器を扱っているなら工学Aから狙う方法もあります。
科目合格制度の一番のメリットは、「決められた順番で受けること」ではなく、「自分の生活と得意不得意に合わせて負荷を分散できること」です。
社会人が一陸技の勉強時間を確保する方法
一陸技では数百時間単位の学習になることがあります。そのため「休日にまとめてやる」だけでは、なかなか積み上がりません。
社会人の場合、1回の勉強時間を長くするより、生活の中に短い学習時間を置く方が続けやすいです。
- 通勤中:法規、公式確認、間違えた問題の見直し。
- 昼休み:10〜15分で過去問を数問確認する。
- 朝:頭が疲れていない時間に計算問題を解く。
- 夜:新しい計算より、その日に解いた問題を復習する。
- 休日:まとまった時間が必要な工学科目を進める。
特に計算問題は、疲れ切った夜に初見問題をやると進みにくいです。可能なら朝や休日など、頭を使いやすい時間へ持っていくとよいでしょう。
「勉強した時間」より「解ける問題」を記録する
勉強時間の記事で少し矛盾するようですが、最終的には「500時間勉強した」という数字自体に意味はありません。
100時間でも合格点を取れる状態なら十分ですし、1,000時間勉強しても過去問が解けなければ、まだ学習方法を見直す必要があります。
おすすめなのは、勉強時間と一緒に過去問の正答率も記録する方法です。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 勉強時間 | 週にどれくらい継続できているか |
| 過去問正答率 | 合格ラインを安定して超えられるか |
| 計算問題 | 答えを見ずに途中式を再現できるか |
| 間違い方 | 知識不足、計算ミス、単位ミスのどれか |
| 所要時間 | 本番の時間内に解けるペースか |
例えば正答率が伸びないのに勉強時間だけ増えているなら、同じ参考書を読むだけになっている可能性があります。その場合は、過去問演習の割合を増やした方がよいかもしれません。
文系・初学者でも一陸技を目指せる?
「1,000時間以上かかる可能性がある」と聞くと、文系の方はかなり不安になると思います。
ただ、一陸技の国家試験には学歴による受験資格の制限はありません。日本無線協会も、無線従事者国家試験について受験資格を問わないと案内しています。
問題は「受験できるか」ではなく、「どの順番で理解していくか」です。
文系だから不利というより、電気数学をまだ学んでいない分だけ、スタート地点が手前になると考えると分かりやすいでしょう。
数学も、いきなり大学レベルをすべて勉強する必要はありません。一陸技の問題で必要になったところから、三角関数、指数・対数、複素数などを順番に補っていけばよいです。
高校数学の教科書を最初から全部やり直す必要はありません。過去問で必要になった内容を確認し、その周辺だけ基礎へ戻る方法なら、試験と関係の薄い分野へ時間を使いすぎずに済みます。
一陸技と二陸技で迷っているなら最初から一級も検討する
一陸技の勉強時間を調べていると、「難しそうだから、まず第二級陸上無線技術士から取った方がよいのでは?」と考える方もいると思います。
もちろん、最終目標が二陸技であれば二陸技を受けるのが自然です。しかし、最初から一陸技取得を目標にしているなら、私は必ずしも二陸技を経由する必要はないと考えています。
第一級と第二級では、無線工学の基礎、法規、無線工学A、無線工学Bという学習分野の大枠が共通しています。
そのため、二陸技を取得したあと一陸技へ進む場合、同じ分野を一陸技の難度でもう一度勉強することになります。
「どうせ最終的に一陸技を取りたい」と決めているのであれば、最初から一陸技の教材と過去問で勉強し、科目合格制度も使いながら進める方法は十分にありだと思います。
第一級と第二級の違いや、どちらから受けるべきかは第二級陸上無線技術士の難易度と一級との違いで詳しく整理しています。
一陸技を取ったあと何に役立つかも考えておく
数百時間を使う資格だからこそ、「合格すること」だけでなく、その先を考えておくことも大切です。
第一級陸上無線技術士は、陸上系の無線設備について非常に広い範囲の技術操作を行える国家資格です。放送、通信インフラ、無線設備、測位など、無線に関係する仕事とのつながりがあります。
ただし、資格を取れば自動的に年収が上がる、必ず転職できる、といった資格ではありません。実際の評価は、資格に加えて実務経験、担当業務、企業側の資格要件などでも変わります。
取得後の仕事まで考えているなら、陸上無線技術士の求人と転職先も合わせて確認すると、「この勉強をどこで使うのか」がイメージしやすくなると思います。
資格そのものの価値が気になる方は、一陸技がすごいと言われる理由でも、操作範囲や仕事との関係を整理しています。
一陸技の勉強時間についてよくある質問
一陸技は500時間勉強すれば合格できますか?
500時間はひとつの計画値にはできますが、500時間で合格できると断定することはできません。
電気系出身なら500時間よりかなり短く済む可能性がありますし、数学や電気回路から学ぶ場合は500時間を超えることもあります。
時間だけではなく、過去問を自力で解けるかを確認しながら判断してください。
一陸技は3か月で合格できますか?
電気電子系の基礎があり、試験までまとまった勉強時間を取れる人なら、3か月程度で4科目を狙える可能性はあります。
一方、初学者が三角関数や交流回路から始める場合、3か月ですべて仕上げようとするとかなり厳しい計画になります。
まず現在の過去問を見て、自分のスタート地点を確認してから決めるのがおすすめです。
一陸技は独学でも合格できますか?
独学での受験は可能です。過去問集や参考書もあり、日本無線協会から試験問題と解答も公開されています。
ただし、完全な初学者の場合、数式や回路で「なぜそうなるのか」が分からず止まりやすいです。その場合は、図解の多い教材や動画などを併用した方が理解までの時間を減らせることがあります。
過去問は何年分やればよいですか?
何年分なら絶対に十分という決まりはありません。まずは手持ちの過去問集を3周程度して、自力で解ける問題を増やすことを優先してください。
余裕があれば複数年分へ広げると、同じテーマでも聞かれ方が変わった問題に触れられます。受験直前には、日本無線協会が公開している最新の問題も確認しておきましょう。
法規は最後に勉強しても大丈夫ですか?
法規は工学科目と比べると、スキマ時間を使いやすい科目です。そのため、試験が近づいてから学習量を増やす方法は取りやすいでしょう。
ただし、完全に直前まで放置すると暗記量が負担になります。通勤などで少しずつ触れ、直前期に過去問を繰り返す形がおすすめです。
一陸技の勉強時間を最適化して合格を目指そう
一陸技の合格に必要な勉強時間は、受験者によってかなり違います。
電気電子系の基礎がある人なら150〜300時間程度から計画を立てられる一方、非電気系の理系なら400〜600時間程度、完全な初学者なら1,000時間以上を想定した方が無理のない場合もあります。
ただし、これらは公的に定められた標準勉強時間ではありません。自分の現在地を確認するための目安として使ってください。

- まず過去問を見る:何が分からないのかを確認して、自分のスタート地点を決める。
- 基礎を飛ばさない:数学・回路が分からないなら、先に必要なところだけ補強する。
- 過去問を中心にする:参考書を読むこと自体を目的にせず、解けない問題を減らしていく。
- 教材を買いすぎない:まず過去問集を1冊選び、必要な科目だけ参考書を追加する。
- 時間ではなく正答率を見る:何時間勉強したかより、自力で解ける問題が増えているかを確認する。
- 科目合格制度も使う:仕事や家庭と両立できないなら、一度で4科目にこだわりすぎない。
私自身も、一陸技を一発で取得したわけではありません。科目合格制度を使いながら3回受験し、最後に残った無線工学Bまで少しずつクリアしていきました。
一陸技は、無線設備の技術操作に関わる非常に専門性の高い資格です。試験勉強では、電気回路、電磁気、送受信機、変復調、アンテナ、電波伝搬、法規まで幅広い知識に触れることになります。
これは、Wireless Tech Noteで扱っているRF回路、アンテナ、Wi-Fi、Bluetooth、スマホ通信、EMCなどを理解するときにもつながる知識です。単に試験問題の答えを覚えるだけではなく、「なぜ電波はこう振る舞うのか」「なぜこの回路になるのか」と考えられるようになることにも、一陸技を勉強する面白さがあります。
最初から1,000時間という数字を見て身構える必要はありません。まず公式の過去問を1回見て、自分が分からないところを一つ見つける。そこから始めれば大丈夫です。
まだ教材を持っていないなら、まず過去問集を1冊決めて実際に問題を見てみてください。そこで基礎が足りないと感じたら基礎用教材を追加し、工学A・Bだけ苦手なら必要な科目だけ補強する。この順番なら、教材費も勉強時間も無駄にしにくいですよ。
焦って短期間で終わらせるより、自分の知識と生活に合ったペースを作ること。それが、仕事をしながら一陸技合格までたどり着くための一番現実的な進め方だと思います。