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NanoVNAの種類と選び方を徹底解説!H4とV2の違いは?

NanoVNA-H4、LiteVNA、NanoVNA-Fの3機種が並んでいる様子。「失敗しないNanoVNAの選び方」というタイトル文字。

電子工作や無線の世界で革命を起こしたNanoVNAですが、いざ購入しようとAmazonを見てみると、あまりの種類の多さに驚いてしまいませんか。「H4」「V2」「Plus4」「F V3」……見た目は似ていても中身は全くの別物だったり、対応する周波数が異なったりと、自分に合った一台を見つけるのは意外と難しいものです。

「とりあえず一番新しいやつを買えばいいんでしょ?」と思っていると、実は痛い目を見るかもしれません。例えば、最新のモデルを買ったはずなのに、古いモデルの方が低周波の精度が高かったり、特定の機能が使えなかったりすることもあるからです。せっかく買ったのに目的の周波数が測れなかった、なんて失敗は絶対に避けたいですよね。

黒いケースに入ったNanoVNAと、内部基板が見える透視図。「見た目は似ていても中身は別物」という注意書きとチップの拡大図。

この記事では、複雑化したNanoVNAの各モデルの違いを、回路構成や設計思想のレベルから噛み砕いて解説し、私が考える「失敗しない用途別の選び方」についてわかりやすく整理してみました。これを読めば、あなたのアマチュア無線ライフや電子工作に最適なパートナーが必ず見つかるはずです。

  • H4やV2など主要モデルの決定的な性能差と内部構造の違い
  • 自分の用途(HF帯、Wi-Fi、ドローン等)に最適なNanoVNAの選び方
  • Amazonに溢れるクローン品や偽物を見分けるための着眼点
  • 正確な測定結果を得るために必須となる校正とコネクタの基礎知識

NanoVNAの種類ごとの違いと性能を徹底比較

NanoVNAは、開発経緯や設計思想によって大きくいくつかの系統に分かれています。これらは単なる「バージョンアップ(V1→V2→V3)」という単純な進化ではなく、それぞれが得意とする周波数帯や測定対象が異なる「別の測定器」と考えた方が理解しやすいでしょう。まずは代表的なモデルごとの特徴をしっかり把握しておきましょう。

初心者におすすめの定番モデルH4

NanoVNAの歴史を作った「オリジナル」の流れを汲むのが、このH(またはH4)系列です。もともとは日本のedy555氏が開発した画期的なオープンソースプロジェクトが起源で、それをHugen氏が実用レベルに改良したものが現在広く流通しています。現在でも「NanoVNA」と言えば、一般的にはこのモデルを指すことが多いですね。

このモデルの最大の特徴は、コストパフォーマンスと安定性のバランスが極めて良いことです。特に4インチの画面を持つ「NanoVNA-H4」は、老眼気味の私にとっても視認性が抜群で、タッチ操作もしやすいのが嬉しいポイントです。2.8インチの初期型と比べると、スミスチャートの細かい軌跡やマーカーの数値がはっきりと読み取れるため、屋外でのアンテナ調整作業が格段に楽になります。

NanoVNA-H4のスミスチャート画面。「初心者におすすめH4」「300MHz以下の測定が非常に正確」というポイント説明。

技術的な仕組みを少し詳しくお話しすると、このH4はSi5351Aというクロックジェネレータチップを使用しています。このチップ自体は本来300MHz程度までしか出力できないのですが、出力される信号(矩形波)に含まれる「奇数次高調波(3倍波、5倍波…)」を上手く利用することで、基本設計を超えた1.5GHzまでの測定を実現しているのです。これがNanoVNAの魔法とも言える部分ですね。

ただし、高調波を利用する300MHz以上の帯域では、どうしてもダイナミックレンジ(測定できる信号の幅)が狭くなり、ノイズが増える傾向があります。逆に言えば、300MHz以下のHF~VHF帯においては基本波で測定できるため、非常に高精度で安定しているとも言えます。

また、H4にはMicroSDカードスロットが搭載されており、PCを使わずに画面のスクリーンショットを保存できるのも大きなメリットです。ファームウェアの更新もSDカード経由で簡単にできるため、PC操作が苦手な方でも扱いやすいモデルだと言えるでしょう。

ここがポイント

300MHz程度までの基本波領域では非常に安定しており、アマチュア無線でよく使うHF帯からVHF帯(144MHz帯など)のアンテナ調整には十分すぎる性能を持っています。世界中で最もユーザー数が多く、情報もネット上に一番多いので、トラブル時に解決策が見つかりやすいのも初心者には心強いですね。

V2系列は高周波測定の精度が大幅に向上

もしあなたが「もっと高い周波数を、もっと正確に測りたい」「フィルタの性能をギリギリまで追い込みたい」と考えているなら、V2系列(別名 S-A-A-2)が有力な選択肢になります。これはH4の単純なアップグレード版ではなく、NanoRFE(HCXQSグループ)によって回路を一から設計し直した完全な別系統のアーキテクチャを持つモデルです。

H4が高調波(倍音)を使っていたのに対し、V2系列(特にPlus4など)はADF4350などの広帯域シンセサイザとAD8342ミキサーを採用し、3.0GHzまでの全帯域を「基本波」で測定します。これが決定的な違いです。基本波で測定できるということは、信号強度が強く、S/N比(信号対雑音比)が格段に良くなることを意味します。

具体的には、H4が高域で60dB程度のダイナミックレンジしか持たないのに対し、V2 Plus4は1GHzにおいて90dB、上位版のPlus4 Proであれば96dB以上のダイナミックレンジを誇ります(出典:NanoRFE『NanoVNA V2 Specifications』)。90dBという数字は、信号を10億分の1まで識別できる能力があることを示しており、水晶フィルタやデュプレクサのような、通過帯域外で急激に信号を減衰させるデバイスの測定において、H4とは比較にならないほど美しい波形を描画できます。

また、V2系列は筐体がしっかりとしたアルミニウム合金で作られている点も見逃せません。高周波測定において外部からのノイズは大敵ですが、金属筐体がシールドの役割を果たし、測定値を安定させています。プラスチック筐体の多いH4と比較して、手にした時の剛性感やプロツール感も所有欲を満たしてくれます。

金属ケースのNanoVNA-V2 Plus4と測定波形のイメージ。「3.0GHzまで対応」「アルミボディでノイズに強い」という特徴説明。

操作性と大画面が魅力のNanoVNA-F

中国のSYSJOINT社が展開する「NanoVNA-F」シリーズは、オープンソースの資産を活用しつつ、商用グレードのハードウェア品質と洗練されたユーザーインターフェースを統合した、独特の立ち位置にあるモデルです。「F」はFlyの頭文字とも言われていますが、その名の通り軽快な操作感が魅力です。

まず目を引くのが、4.3インチの大型IPS高解像度ディスプレイ(800x480ピクセル)です。H4やV2の画面も悪くありませんが、Fシリーズの液晶は明るさと視野角が段違いで、晴天の屋外でもくっきりと波形を確認できます。タッチスクリーンの反応もスマホ並みにスムーズで、ストレスを感じさせません。

さらに、操作性の面で特筆すべきは、本体側面に装備された「ジョグダイヤル(三方ボタンスイッチ)」です。タッチパネルは便利な反面、手袋をしていたり指が汚れていたりする現場では反応しづらいことがあります。そんな時、物理的なダイヤルで周波数を送ったりメニューを選択したりできるのは、フィールドワークを知り尽くした設計だと言えるでしょう。

太陽が降り注いでいてもみやすいことを表す図。

バッテリー容量も5000mAhと非常に大きく、連続7時間以上の駆動が可能です。山にアンテナを担いで移動運用するようなシチュエーションでは、予備のモバイルバッテリーを持ち歩かなくて済むのは荷物が減って助かるでしょう。

最新モデルの「NanoVNA-F V3」では、測定周波数範囲が1MHzから6GHzまで一気に拡張されました。内部のプロセッサも高速なものに換装されており、スイープ速度(画面更新速度)が200ポイント/秒まで向上しています。広帯域をスキャンしてもリアルタイムに近い感覚で波形が追従してくるので、フィルタの調整作業などが劇的にスムーズになります。

6GHzまで対応するLiteVNAの携帯性

最近私が特に注目しており、カバンに常に入れているのが「LiteVNA」シリーズです。このモデルは、NanoVNA-H4と同じくらいのコンパクトなサイズ(2.8インチまたは4インチ)でありながら、なんと6.3GHzまでの測定能力を凝縮しています。

LiteVNAの設計思想は非常に合理的です。基本的にはV2(S-A-A-2)のアーキテクチャをベースにしつつ、部品点数を削減し、高周波スイッチやミキサーの構成を最適化することで、安価ながら6GHz超の特性を実現しています。3GHzまでは基本波で高いダイナミックレンジを維持し、それ以上の帯域では高調波などを併用して測定範囲をカバーするというハイブリッドなアプローチを採っています。

小型で6.3GHzまで測定できることを表す図。

そして何より素晴らしいのが、MicroSDカードスロットを搭載している点です。V2系列の多くのモデル(Plus4など)はPC接続を前提とした設計になっており、単体でのデータ保存機能が省略されていることが多いのですが、LiteVNAは本体だけでスクリーンショットやTouchstoneファイル(.s1p)を保存できます。PCを持ち込めない鉄塔の上や狭い屋根裏でのアンテナ調整において、この機能はまさに「神機能」と言えるでしょう。

注意点

LiteVNAは非常に優秀ですが、初期のロットや一部の設計において、電源管理回路(PMIC)に課題があり、電源オフの状態でもバッテリーが微量に放電されてしまう問題が報告されています。数週間放置するとバッテリーが空になっていることがあるため、久しぶりに使用する際は、必ず前日に充電状況を確認することをおすすめします。

プロ仕様のVNA6000は精度が別次元

最後に、「NanoVNA」という名称からは少し外れますが、同じ開発チーム(NanoRFE)が世に送り出した「VNA6000」についても触れておきましょう。これはもはやホビー用という枠を完全に超えた、プロフェッショナルグレードのポータブルVNAです。

最大の特徴は、徹底的な温度対策とアナログ回路のシールド強化による、圧倒的な測定安定性です。安価なVNAは、電源を入れてから内部温度が上昇するにつれて測定値がズレていく(ドリフトする)現象が避けられませんが、VNA6000は温度補償回路によりこのドリフトを極限まで抑えています。ラボで朝にキャリブレーションを行えば、夕方までその精度を維持できるレベルです。

性能面でも、上位モデルの「VNA6000-B」は5.8GHz帯において110dBという驚異的なダイナミックレンジを達成しています。110dBという数字は、業務用据え置き機に迫る性能であり、非常に高性能なアイソレータや、減衰量の大きいフィルタの阻止帯域などを正確に評価することが可能です。価格は数百ドルから千ドル近くと高価になりますが、仕事で信頼できるデータが必要なエンジニアの方や、究極の測定環境を求めるハイエンドユーザーにとっては、決して高い買い物ではないでしょう。

入手方法:Amazonや楽天では買えません

非常に魅力的なVNA6000ですが、購入にあたって一点だけハードルがあります。それは、日本のAmazonや楽天市場といった一般的なECサイトでは取り扱いがないという点です。

NanoVNAやLiteVNAであれば国内在庫を持つショップからすぐに届きますが、VNA6000は開発元(NanoRFE)からの直販が基本となります。

英語での住所入力や海外発送(個人輸入)となりますが、これが唯一の正規ルートであり、偽物を掴まされるリスクを回避して確実に本物を入手する方法です。

正規購入ルートはこちら

VNA6000は、開発元が認定する唯一の正規直販ストア(Tindie)からの購入を推奨します。
※AliExpress等でも販売されていますが、開発元はコピー品や非正規品のリスクについて警告しています。

公式ストアで在庫を見る (Tindie)

用途に合わせたNanoVNAの種類の選び方

各モデルの特徴が見えてきたところで、次は「結局、自分にはどれが合っているの?」という疑問にお答えします。スペック表だけでは見えてこない、実際の使用シーンに合わせたベストな選択肢をピックアップしてみました。

アマチュアアンテナ調整ならH4、フィルタ自作ならV2、屋外使用ならFシリーズ、ドローンならLiteVNAという推奨リスト。

アマチュア無線の調整ならH4がベスト

あなたがもし、3.5MHz帯や7MHz帯のHFアンテナ、あるいは144MHz/430MHz帯のV/UHFアンテナを自作したり調整したりするのが主な目的であれば、迷わず「NanoVNA-H4」をおすすめします。

理由は単純明快で、300MHz以下の基本波領域における測定精度が非常に高く、かつ画面が大きくて見やすいからです。アマチュア無線のアンテナ調整は、屋外でエレメントを切ったり伸ばしたりしながらSWR計とにらめっこする作業になります。この時、H4の大きな画面と、直感的なタッチ操作、そして何より「電池持ちの良さ」は大きな武器になります。

また、H4には「TinyPFA」という特殊なファームウェアを入れることで、高精度な周波数カウンタや発振器の位相差測定器に変身させるという裏技的な使い方も存在します。こうした遊びの幅広さも、ユーザー数の多いH4ならではの魅力と言えるでしょう。

ドローンやWi-Fi開発には6GHz対応機

一方で、2.4GHz帯のWi-Fiアンテナや、5.8GHz帯を使用するFPVドローンのビデオ送信機(VTX)アンテナを評価したい場合は、H4では力不足です。H4でも1.5GHzまで測れると言えば測れますが、それはあくまで「測れる」だけであり、高周波でのノイズや測定誤差が大きいため、実用的な評価には適しません。

この用途には、6GHzまでカバーできる「LiteVNA 64」または「NanoVNA-F V3」が必須となります。特に、ドローンの現場などで荷物を減らしたい場合は、胸ポケットに入るLiteVNAが最強です。逆に、自宅の作業机でじっくりとアンテナを製作したり、コネクタの損失を測ったりする場合は、重量があって安定し、画面も見やすいNanoVNA-F V3を選ぶと幸せになれるでしょう。

クローン品や偽物を見分ける重要なポイント

ここで一つ、非常に重要な注意点があります。NanoVNAはオープンソースであるがゆえに、AmazonやAliExpressなどのマーケットプレイスには、設計図をコピーして作られた粗悪な「クローン品」が大量に出回っています。

特に注意すべきは、外見はH4そっくりでも、中身のシールド部品が省略されていたり、重要なチップが安価な互換品に置き換えられていたりするケースです。ひどいものになると、ファームウェアが独自の古いバージョンでロックされており、最新の修正パッチを適用できないものすら存在します。

電子基板の上に大きく赤い禁止マークと虫眼鏡。「粗悪なコピー品に注意」「極端に安い価格は避ける」という警告文。

見分けるポイントとしては、「黒い基板が見えるモデル」や「メーカーロゴ(ZeenKoやSYSJOINTなど)が入っていない無印モデル」には警戒が必要です。また、相場よりも極端に安い(例えば3,000円〜4,000円など)商品もリスクが高いです。少しだけ高くても、Hugen氏の公式ストアや、日本の正規代理店(スイッチサイエンスさんや秋月電子さんなど)が扱っている商品を選ぶのが、結果的に一番の節約になります。

正確な測定に必要な校正とコネクタの知識

どの種類のNanoVNAを選んだとしても、避けて通れないのが「キャリブレーション(校正)」という儀式です。高価な業務用のVNAであっても、NanoVNAであっても、測定端(コネクタの先端)までのケーブルの状態や電気的な遅延を計算で打ち消して初めて、正しい値を表示することができます。

「買ったばかりだから合っているはず」というのは間違いです。使用する周波数範囲を変更したり、接続する測定用ケーブルを変えたりした時は、必ず「OPEN(開放)」「SHORT(短絡)」「LOAD(終端)」の3つの基準器を使って再校正を行う必要があります。

「正確な測定のルール」という見出し。「周波数を変えたら必ず校正する」「高品質な変換コネクタを使う」という箇条書き。

コネクタの変換に注意

NanoVNAの本体コネクタは基本的に「SMA型(メス)」ですが、日本のアマチュア無線機やアンテナでは「M型(UHF型)」が一般的です。そのため変換アダプタを使うことになりますが、高周波ではこのアダプタ一つが反射の原因(インピーダンスの不整合)になります。

特に430MHz帯以上やWi-Fiの周波数では、安物の変換コネクタを使うとSWRが悪化して見えることがあります。測定の際は、できるだけ変換段数を減らし、信頼できるメーカー製(トーコネや第一電波工業など)の精度の高い変換コネクタを使用することを強く推奨します。

最適なNanoVNAの種類で測定を楽しもう

NanoVNAの種類について、その歴史から最新モデルの選び方まで解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。単なるサイズ違いではなく、内部のチップや測定原理そのものが異なる進化を遂げていることがお分かりいただけたかと思います。

V1系列(H4)の圧倒的な安定感とコストパフォーマンス、V2系列の精密な測定能力、F系列の現場での使い勝手、そしてLiteVNAの驚異的な広帯域と携帯性。それぞれに素晴らしい個性があり、どれが「最強」かを決めることはできません。重要なのは、自分が「どの周波数で」「何を見たいのか(SWRなのか、フィルタ特性なのか)」を明確にすることです。

ぜひ、あなたの用途にピッタリ合う一台を見つけて、目に見えない電波の世界を可視化する楽しさを体験してみてください。一度その波形を見てしまうと、もうこれ無しの電子工作や無線ライフには戻れませんよ。

作業机の上に置かれたNanoVNAとハンダごて、工具類。夕日が差し込む窓辺の風景。「目的に合った一台で、電子工作を楽しもう」というメッセージ。

 

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レオ

Wireless Tech Note は、無線・Bluetooth・Wi-Fi・通信技術を、公式情報や規格を基に分かりやすく解説する技術ブログです。 仕組みや背景を丁寧に整理し、一次情報へ戻れる安心できる解説を目指しています。 保有資格:第一級陸上無線技術士、基本情報技術者

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