マンションに住んでいて、「光回線を契約しているはずなのに、夜になると動画が止まる」「リビングでは速いのに、寝室に行くとアンテナが1本になってしまう」といった経験はありませんか?実はそれ、回線のせいでもプロバイダのせいでもなく、ルーターの「置き場所」が原因かもしれません。
私も以前は、「Wi-Fiなんてどこに置いても飛ぶだろう」と高を括っていました。しかし、引っ越した先の鉄筋コンクリート(RC造)のマンションで、その考えが甘かったことを痛感したんです。戸建ての木造住宅とは違い、マンションには電波にとっての「天敵」がたくさん潜んでいます。特に、良かれと思ってやっている「隠す収納」や、なんとなく置いている「テレビの横」が、実は通信速度を劇的に下げている犯人だったりするのです。
この記事では、ガジェット好きの私が実際に試して効果があった方法や、建築・通信の仕組みに基づいた「マンションならではの正解ルート」を徹底的に解説します。単なる精神論ではなく、物理的に電波をどう飛ばすかという戦略を知れば、あなたの家のWi-Fi環境は劇的に改善するはずです。
- 鉄筋コンクリートの壁がWi-Fiの電波を遮断してしまう物理的なメカニズム
- 多くの人がやってしまいがちな「テレビ裏」や「靴箱」設置の致命的なデメリット
- 100均グッズなどで安く実現できる、放熱と通信品質を両立させるDIY収納術
- 中継機やメッシュWi-Fiを導入する際の、失敗しない「黄金の配置ルール」
マンションのWi-Fiルーター置き場所で失敗する原因

まずは、なぜマンションだとWi-Fiが飛びにくいのか、その根本的な原因を解明していきましょう。「高いルーターを買えば解決する」と思っている方も多いですが、設置場所が悪ければ、どんなに高性能なルーターもその真価を発揮できません。ここでは、マンション特有の構造的な課題と、よくあるNG配置について詳しく見ていきます。
鉄筋コンクリートで電波がつながらない理由
マンションでWi-Fiが弱くなる最大の要因は、建物そのものの構造、つまり「鉄筋コンクリート(RC造)」にあります。木造の戸建てであれば、壁や床に使われている木材や石膏ボードは、電波にとってそれほど大きな障害にはなりません。ある程度は透過して、隣の部屋まで届いてくれます。
しかし、コンクリートは別物です。コンクリートはその性質上、内部に水分を含んでおり、さらに強度のために網目状の「鉄筋(金属)」が埋め込まれています。Wi-Fiの電波(マイクロ波)には、水分に吸収されやすく、金属に反射されるという性質があるため、鉄筋コンクリートの壁は、電波にとって「分厚いシールド」のような役割を果たしてしまうのです。

5GHz帯は特に壁に弱い
最近の主流である高速な「5GHz帯」の電波は、直進性が強い反面、障害物を回り込む力(回折性)が非常に弱いという特徴があります。そのため、ルーターとスマホの間にコンクリートの壁が1枚あるだけで、電波強度は「減衰」どころか「ほぼ遮断」というレベルまで落ち込んでしまうことがあります。「ドアを開けていると繋がるのに、閉めると切れる」というのは、まさにこの物理現象が原因です。
知っておきたい基礎知識:電波の減衰
一般的に、鉄筋コンクリートの壁を通過すると、電波の強さは10分の1以下になるとも言われています。これはルーターの性能不足ではなく、物理法則による限界なのです。
テレビ裏に置くと通信速度が遅い原因

リビングのインテリアを邪魔したくないという理由で、大型テレビの裏側にルーターを隠して設置しているケースをよく見かけます。配線も隠せて一石二鳥に見えますが、通信品質の観点からは「最悪」に近い配置だと言わざるをえません。
まず、テレビやブルーレイレコーダー、ゲーム機といったAV機器は、内部に金属製の基板やフレームがぎっしりと詰まっています。これらは電波を強力に反射・吸収するため、ルーターの目の前に巨大な「金属の壁」を立てているのと同じ状態になります。ルーターが必死に電波を出しても、その直後でテレビに跳ね返され、部屋全体に広がっていかないのです。
ノイズと熱の二重苦
さらに問題なのが「ノイズ」と「熱」です。テレビ裏には電源ケーブルやHDMIケーブルが密集しており、これらが発する電磁ノイズがWi-Fiの通信に干渉し、パケットロス(データの消失)や速度低下を引き起こすことがあります。
加えて、テレビ自体が発熱体です。ただでさえ狭くて空気が滞留しやすいテレビ裏で、ルーター自身の熱とテレビの熱が合わさると、ルーター内部の温度が危険なレベルまで上昇します。すると、ルーターは故障を防ぐためにわざと処理能力を落とす「サーマルスロットリング」という制御を行い、結果としてネットが遅くなったり、突然再起動したりという不安定な挙動を招くことになります。
玄関の靴箱に設置するデメリット
最近のマンション、特に新築やリノベーション物件では、インターネットの回線終端装置(ONU)や情報分電盤が、玄関のシューズクローゼットや靴箱の中に集約されていることが増えています。「美観のために隠す」という設計思想ですが、Wi-Fiルーターの置き場所としては非常に不利な条件が揃っています。
最大のデメリットは「家の中心から遠すぎる」ことです。Wi-Fiの電波はルーターを中心に同心円状(ドーナツ状)に広がります。もしルーターを家の端っこである玄関に置いてしまうと、電波の半分は玄関の外、つまり共用廊下側に向かって無駄に飛んでいくことになります。そして肝心のリビングや、反対側のバルコニーに面した部屋までは距離が遠くなり、電波が届きにくくなってしまうのです。
金属扉と密閉空間の罠
さらに、靴箱の扉にも注意が必要です。もし扉が金属製や、金属の補強が入っているタイプであれば、ファラデーケージ効果により電波は中に閉じ込められ、外にはほとんど出てきません。木製の扉であっても、密閉された狭い空間は熱がこもりやすく、夏場などはルーターが熱暴走を起こすリスクが高まります。靴の湿気やホコリも電子機器にとっては大敵であり、寿命を縮める原因にもなりかねません。
キッチンなど水回りで電波が弱まる仕組み
「リビングには置いているけれど、なぜかキッチン周辺だけ電波が悪い」という悩みもよく聞きます。これには、Wi-Fiが使用している周波数帯の特性が大きく関係しています。
Wi-Fiで広く使われている「2.4GHz帯」という周波数は、実は電子レンジの加熱に使われているマイクロ波と同じ周波数帯なんです。電子レンジが食品を温められるのは、この周波数の電波が「水分子を振動させて熱エネルギーに変える(=水に吸収される)」という性質を持っているからです。つまり、Wi-Fiの電波もまた、「水」にぶつかると吸収されてエネルギーを失ってしまうのです。
家庭内にある「水の壁」
キッチン周りには、以下のような「水の塊」や「金属の塊」がたくさんあります。
- 冷蔵庫(金属の箱の中に食材=水分が入っている、最強の遮蔽物)
- ウォーターサーバーのボトル
- シンクや蛇口などの金属類
- 食洗機
また、キッチンの隣に洗面所や浴室がある間取りの場合、その壁の中には水道管が通っており、浴槽には水が張られています。もしルーターとスマホの間にキッチンや浴室が位置するような配置になっていると、これらの「水と金属」に電波が吸い取られ、通信速度がガクンと落ちてしまうのです。
田の字間取りで電波が届きにくい部屋
マンションで最もポピュラーな間取りといえば、中央の廊下を挟んで居室が配置され、奥にリビングがある「田の字型」でしょう。この間取りは採光や通風の面では優れていますが、Wi-Fi環境構築においては一つの大きな課題を抱えています。
通常、インターネットの光コンセントはリビング(バルコニー側)か、玄関(共用廊下側)のどちらかに設置されています。仮にリビングにルーターを設置したとしましょう。すると、玄関側にある寝室や子供部屋までは、長い廊下を通り、さらに厚いコンクリートの壁やドアを隔てることになります。
「廊下の角」が鬼門
電波は光に似た性質を持っており、障害物に当たると反射したり回折(回り込み)したりして進みます。しかし、直進性の強い5GHz帯は、廊下の角を曲がって部屋の中に入り込むのが苦手です。まるで懐中電灯の光が角の向こう側を照らせないように、廊下までは電波が来ていても、部屋の中に入った途端に圏外になってしまう現象が起きます。
かといって2.4GHz帯を使おうとすると、今度は近隣からの干渉を受けやすく、速度が出ない。田の字型マンションの玄関側の部屋は、まさにこの「届かない」「遅い」のジレンマに陥りやすい構造的なウィークポイントなのです。

マンションで最適なWi-Fiルーター置き場所の正解
ここまでは「なぜ繋がらないのか」というネガティブな要因を見てきましたが、ここからは「じゃあどうすればいいの?」という解決策にフォーカスしていきましょう。高価な機材を買い足す前に、まずは配置の工夫だけで改善できることはたくさんあります。
床から離した高さへの設置が重要な理由
私が友人の家のWi-Fi設定を手伝いに行って一番最初に見直すのが「高さ」です。多くの人が、ルーターを床に直置きしたり、テレビボードの下段に入れたりしていますが、これは非常にもったいない配置です。
Wi-Fiルーターのパフォーマンスを最大化するための鉄則、それは「床から1m〜2mの高さを確保すること」です。これには「フレネルゾーン」という無線工学上の明確な理由があります。
フレネルゾーンを確保せよ
少し専門的な話になりますが、電波が送信側(ルーター)から受信側(スマホ)へ飛ぶとき、一直線に飛ぶのではなく、ラグビーボールのような膨らみを持った空間(フレネルゾーン)を形成しながら伝わります。もしルーターを床に置いてしまうと、このラグビーボールの下半分が床に埋まってしまい、地面に吸収されたり反射波が干渉したりして、電波の品質が著しく低下してしまうのです。

また、床面はホコリが最も多い場所でもあります。精密機器であるルーターがホコリを吸い込むと、内部ショートや熱暴走の原因になります。サイドボードの上や、壁掛け設置などで「高さを出す」だけで、障害物を越えて電波が遠くまで飛びやすくなり、同時に故障のリスクも減らせるのです。
ルーターを隠す収納で気をつける素材

インテリアにこだわる方にとって、無機質でアンテナが突き出たルーターは「隠したい存在」No.1かもしれません。しかし、隠すために使う収納ボックスの素材選びを間違えると、自ら電波を閉じ込める檻を作ってしまうことになります。
収納グッズを選ぶ際は、以下の基準を絶対に守ってください。
| 素材 | 電波透過性 | 放熱性 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 金属(スチール・アルミ) | ×(遮断・反射) | △(素材自体は冷たいが囲うと×) | 絶対NG |
| 木材(無垢・合板) | △(厚みによると減衰) | △(熱がこもりやすい) | 注意が必要 |
| プラスチック・アクリル | ○(ほとんど通す) | △(通気口が必要) | 推奨 |
| 布・ラタン(籐)・紙 | ◎(ほぼ影響なし) | ◎(通気性抜群) | 最もおすすめ |
特におしゃれなインテリアショップで売られている「スチール製のワゴン」や「ブリキのボックス」は、電波にとっては最悪の選択です。どうしても隠したい場合は、電波を通しやすく、かつ網目状で通気性が確保されているラタン(籐)のカゴや、背面がオープンになっている木製のラックなどを選びましょう。見た目よりも「素材の物理特性」を優先することが、快適なネット生活への近道です。
放熱対策を意識した浮かせ収納のコツ
ルーターは24時間365日、休まずデータを処理し続けている働き者です。高性能なルーターほどCPUの発熱量はすごく、夏場などは触ると熱いと感じるほどになります。この「熱」をどう逃がすかが、通信速度の安定性を大きく左右します。
私が実践していて、コストパフォーマンス最強だと感じているのが「ワイヤーネットを使った空中浮遊収納」です。ダイソーやセリアなどの100円ショップで手に入るワイヤーネットとフック、結束バンドを使います。
煙突効果で熱を逃がす
具体的な方法は、壁や棚の側面にワイヤーネットを取り付け、そこにルーターを縦向きに結束バンドで固定するだけ。これだけで、以下のメリットが生まれます。

- 360度放熱: ルーターの底面や背面が壁や棚板に密着せず、全方向が空気に触れるため、冷却効率が劇的に向上します。
- 上昇気流の活用: 暖かい空気は上に昇ります。縦置きにして浮かせると、下から冷たい空気が入り、上から熱が抜けていく「煙突効果」が期待できます。
- 掃除が楽: 床に置かないので、掃除機をかけるときに邪魔になりませんし、ホコリの吸い込みも防げます。
見た目が気になる場合は、前述のラタンのカバーなどを軽く被せればOK。まずは「浮かせて冷やす」環境を作ってみてください。
中継機を活用して壁の遮断を回避する
ルーターの配置を変えても、どうしてもコンクリートの壁に阻まれて電波が届かない部屋(デッドスポット)がある場合、無理をせずに「中継機」や「メッシュWi-Fi」の導入を検討すべきです。ただし、これも「買ってきてコンセントに挿せば終わり」ではありません。
中継機の設置場所には、唯一絶対の成功法則があります。それは、「親機と、使いたい場所の『中間地点』に置く」ことです。

よくある失敗が、「電波が届かない寝室の中に中継機を置く」パターンです。これだと、中継機自体が親機からの微弱な電波しかキャッチできず、不安定な信号をそのまま増幅してしまうため、速度はほとんど改善しません。
廊下を「電波の架け橋」にする
正解は、リビング(親機)からの電波がまだ十分に強く(アンテナが2〜3本立つ場所)、かつ寝室への見通しが良い場所、つまり「廊下」や「リビングのドア付近」に設置することです。こうすることで、中継機が元気な電波を受け取り、それをバケツリレーのように壁の向こう側へ投げ渡してくれます。
予算に余裕があるなら、親機と連携して網の目状にネットワークを構築する「メッシュWi-Fi」が圧倒的におすすめです。従来の単純な中継機とは違い、最も効率的な経路を自動で計算してくれるため、広いマンションでも家中どこでも途切れない環境が手に入ります。
Wi-Fiの中継器に関しては、「Wi-Fiの増幅器と中継器の違いを解説」の記事も参考にしてみてください。
干渉を防ぐ5GHz帯の活用と設定
最後に、機器の配置だけでなく「設定」による回避策をお伝えします。マンションは、上下左右の住人全員がWi-Fiを使っている「電波過密地帯」です。特に「2.4GHz帯」は、チャンネル数が少なく、互いの電波がぶつかり合って速度低下を起こしやすい傾向にあります。
そこで意識したいのが、「5GHz帯の積極利用」です。先ほど「5GHz帯は壁に弱い」と言いましたが、これは逆に言えば「隣人の5GHz帯の電波も、壁に阻まれて自分の部屋には入ってきにくい」というメリットになります。つまり、自室内での干渉リスクが非常に低いのです。
DFS機能とチャンネル選び
ただし、5GHz帯の一部(W53/W56)は、気象レーダーなどと干渉した場合に通信を一時停止する機能(DFS)が働くことがあります。これが頻発すると「切れる」原因になります。
総務省のガイドラインでも、干渉を避けるためのチャンネル選択や帯域の使い分けが推奨されています。もし5GHz帯でも不安定な場合は、ルーターの設定画面でDFSの影響を受けない「W52(36, 40, 44, 48ch)」に固定してみるのも一つの手です。自動設定任せにせず、自宅の環境に合ったチャンネルを見つけることで、驚くほど安定することがあります。
(出典:総務省『公衆無線LANの構築・運用ガイドライン』)
※こちらの資料は公衆無線LAN向けですが、干渉回避やチャンネル設計の考え方は家庭用Wi-Fiにおいても非常に参考になる一次情報です。
マンションのWi-Fiルーター置き場所を見直そう

ここまで、マンション特有のWi-Fi事情と、その対策について長文にお付き合いいただきありがとうございました。結論として、マンションでのWi-Fiルーター置き場所の正解は、一つの決まった場所ではなく、「コンクリートの壁を避け、床から離し、熱を逃がす」という3つの条件を満たすポイントを探すことにあります。
今回のまとめ:今日からできる改善アクション
- ルーターを床置きせず、棚の上など高い位置(1m以上)に移動する。
- テレビ裏や金属製のボックスから出し、通気性の良い場所に置く。
- 玄関など端にある場合は、廊下に中継機を置いて電波をリレーさせる。
- 可能な限り5GHz帯を利用して、近隣との電波干渉を避ける。
「たかが置き場所」と侮るなかれ。ちょっとした配置換えや、100均のワイヤーネットを使ったDIYだけで、高価なルーターに買い換える以上の効果が出ることも珍しくありません。「遅いなぁ」とストレスを感じながら使い続ける前に、まずは今あるルーターを解放してあげるところから始めてみてはいかがでしょうか。あなたのWi-Fi環境が、今日から快適になることを願っています。
※本記事で紹介した建築資材の影響や数値は一般的な目安であり、実際の環境や建物の施工状況によって異なります。また、電気工事を伴う変更等は専門家にご相談ください。