無線規格・ネットワーク

Bluetoothの距離は何m?届く範囲と安定させるコツを解説

Bluetoothの通信距離は10mだけとは限らないことを説明するタイトルスライド

Bluetoothイヤホンやマウスを使っていて、「スマホから何mまで離れても使えるの?」「隣の部屋まで届く?」「Bluetooth 5.0なら距離も長いの?」と気になることがありますよね。

Bluetoothの距離は、カタログに書かれたバージョンだけを見ても決まりません。実際には、送信出力、アンテナの作り、受信性能、壁や床、人の体、2.4GHz帯の混雑が重なって、使える範囲が決まります。

私は無線回路の設計に携わっていて、第一級陸上無線技術士の資格も持っています。今回は理屈だけで終わらせず、手元のAirPods Pro(第1世代)とiPhone SE(第3世代)を使って、実際にどこまで音声が途切れずに届くかも試しました。結果は、見通しのよい屋外で約20m。思っていたより遠くまで届きました。

Bluetoothの「10m」は絶対的な上限ではありません。一方で、条件が悪ければ数mでも音が途切れることがあります。この記事では、その差が生まれる理由と、距離を伸ばしたいときに何から見直せばよいのかを、できるだけ分かりやすく説明します。

  • Bluetoothが実際に届く距離の目安
  • ClassとBluetoothバージョンの違い
  • AirPods Proで約20m届いた実測結果
  • Bluetoothの範囲を広げる現実的な方法

Bluetoothの距離は何m?

最初に一番知りたいところからいきます。Bluetoothは「何m」と一つの数字で決められる通信ではありません。Bluetooth SIGも、信頼して通信できる範囲は1m未満から1kmを超えるものまであり得ると案内しています。これはBluetoothという名前が同じでも、製品ごとの送信出力やアンテナ、通信方式、周囲の環境が大きく違うからです。

10mは上限ではなく目安

Bluetoothを調べると、「Class 2は約10m」「Class 1は約100m」といった表をよく見かけます。ざっくりイメージするには便利ですが、ここは少し注意が必要です。

Bluetoothの10mは目安であり、環境によって届く距離が変わることを示す図

Bluetoothの仕様で定められているPower Classは、本来送信電力の区分です。Bluetooth Core Specificationでは、Class 1、Class 2、Class 3を最大送信電力で分けています。つまり、Class 2だから10mで電波が急に消えるわけではありません。

Power Class 最大送信電力の区分 使われ方のイメージ
Class 1 4dBm超~20dBm以下 長い距離を意識したアダプタや業務機器など
Class 2 0dBm超~4dBm以下 スマホ周辺機器などでよく見かける区分
Class 3 0dBm以下 ごく近距離を想定した機器

距離は、送信側から出た電波が空間や壁で減衰し、受信側が通信を続けられるレベルを下回ったところで限界になります。だから同じClassでも、アンテナ設計や受信感度が違えば結果は変わります。

ポイント:「Class 2=最大10m」と考えるより、「Class 2は送信電力の区分で、実際の距離は機器と環境によって変わる」と理解しておく方が正確です。

実用距離は機器ごとに違う

日常用途では、イヤホンやマウス、キーボードなら数mから十数m程度で使うことが多いと思います。机の周りで使うBluetoothマウスなら1mも離れませんし、イヤホンならスマホを机に置いて部屋を移動することもありますよね。

このとき大事なのは、必要な距離を満たせているかです。100m届くことより、リビングからキッチンへ移動しても切れないことの方が重要な人も多いでしょう。逆に、PCを離れた場所から操作したい、広い作業場でBluetooth機器を使いたいという場合は、Class 1対応アダプタなどを検討する意味が出てきます。

片側だけ高性能でも限界がある

スマホとイヤホンの双方向通信により片側だけ高性能でも距離が伸びない場合があることを示す図

Bluetoothは基本的に双方向でやり取りします。ここは距離を考えるうえでかなり大切です。

例えば、PC側をClass 1対応Bluetoothアダプタに交換したとします。PCからイヤホンへ届く電波に余裕ができても、イヤホン側からPCへ返す通信が同じ条件とは限りません。受信性能やアンテナの向きも両側で違います。

だから、「Class 1アダプタに交換すれば必ず通信距離が何倍にもなる」とは言い切れません。改善する可能性はありますが、最終的なリンクは送信側と受信側の組み合わせで決まります。

◆ワンポイントアドバイス

無線回路の設計では、送信電力だけを見て距離を判断しません。アンテナ利得、受信感度、筐体、周辺部品、設置方向まで含めて通信の余裕を見ます。Bluetooth製品も同じで、「新しい規格」「Class 1」という一つの表示だけで決めない方が失敗しにくいですよ。

AirPods Proで距離を実測

カタログの話だけでは実感しにくいので、私が普段使っているAirPods Pro(第1世代)でBluetoothの距離を測ってみました。Apple公式の技術仕様では、AirPods Pro第1世代はBluetooth 5.0対応です。一方、Apple公式ページではPower Classの記載は確認できなかったため、この記事ではClass 2とは断定しません。

Bluetooth通信距離の実測に使用したAirPods Pro第1世代の左右イヤホンと充電ケース

Bluetooth通信距離の実測に使用したAirPods Pro第1世代

測定条件と測り方

測定では、iPhone SE(第3世代)とAirPods Proを接続し、ポッドキャストを流し続けました。iPhoneをその場に置き、AirPods Proを装着したまま私が少しずつ離れていきます。そして、雑音が入る、音が途切れる、再生が止まるといった変化が出た位置までのおおよその距離を確認しました。

屋外では、iPhoneと私の間に大きな障害物が入らない場所を選んでいます。時間帯は夜の住宅街。昼間にスマホを置いたまま一人でどんどん離れていくと、かなり怪しい光景になりそうだったので夜にしました。

今回の測定は研究機関の試験設備で行ったものではなく、実使用に近い簡易テストです。距離、周囲のWi-Fi利用状況、端末の向き、住宅環境などで結果は変わるため、数値はあくまで一例として見てください。

屋外では約20mまで届いた

結果は、約20m付近で雑音が入り、その直後に音が止まるというものでした。私自身、もう少し手前で途切れると思っていたので、これは意外でした。

よくある「Bluetoothは10mくらい」というイメージから見ると、20mはかなり遠く感じます。ただし先ほど説明した通り、10mは絶対的な上限ではありません。見通しがあり、周囲の電波利用が比較的少なく、送受信の条件が合えば、それ以上の距離で使えることは十分あり得ます。

逆に、駅や商業施設のように2.4GHz帯を使う機器が多い場所なら、同じ20mまで届くとは限りません。今回の結果から言えるのは、私のAirPods ProとiPhone SEの組み合わせでは、夜の住宅街の見通し環境で約20mまで音声再生を続けられたということです。

鉄筋マンション内でも試した

次に、自宅の鉄筋コンクリート造マンションでも試しました。iPhoneを家の端に置き、AirPods Proを着けたまま室内を移動してみましたが、私の住環境では室内の端まで移動しても大きな雑音は出ませんでした。

ただ、ベランダに出ると雑音が入ることがありました。さらに上の階へ移動すると音が乱れました。水平方向の部屋移動より、床を挟んで上下階へ移動した方が条件は厳しかったわけです。

鉄筋コンクリートは、コンクリートそのものに加えて内部の鉄筋や配線、配管、建具なども電波の通り方に影響します。とはいえ、部屋の広さや間取りは住宅ごとに違うため、「鉄筋マンションなら何m」と一律には決められません。

AirPods Proの実測で屋外は約20m届き、鉄筋コンクリート室内では途切れやすいことを示す比較図

Bluetoothの範囲が変わる理由

では、なぜ同じBluetoothでも5mで途切れる機器があれば、20m以上届くことがあるのでしょうか。距離を決める要素は一つではありません。ここを知っておくと、接続が不安定になったときの原因も見つけやすくなります。

人体、壁や床、2.4GHz帯の混雑、アンテナの向きがBluetooth距離に影響することを示す図

送信出力で届き方が変わる

まず分かりやすいのが送信出力です。送信側が空間へ出せる電力に余裕があれば、同じ条件なら遠い場所でも受信側に電波が届きやすくなります。Power Classが注目されるのはこのためです。

日常用途では、送信出力だけを追いかけるより、用途に合った製品を選ぶ方が現実的です。机上のマウスなら長距離性能は不要ですし、離れた場所で使うPC周辺機器ならClass 1対応製品を候補にする価値があります。

アンテナの作りと向きも効く

Bluetooth機器のアンテナは、スマホやイヤホンの筐体内部に入っていることがほとんどです。外から見えないので意識しにくいのですが、通信距離にはかなり関係します。

そのため、端末の向きや持ち方が変わるだけで通信の余裕が変わることがあります。スマホをポケットに入れた瞬間だけ音飛びが増えるなら、距離そのものよりアンテナの向きや人体による減衰が関係しているかもしれません。

壁や床と人体で減衰する

Bluetoothが使う2.4GHz帯の電波は、壁、床、家具、人の体などを通ると減衰します。特に人体は水分を多く含むため、スマホとイヤホンの間に体が入るだけでも条件が変わります。

例えば、スマホを右後ろのポケットに入れ、左耳側にBluetoothアンテナを持つイヤホンを使った場合、体が通信経路に入りやすくなります。カバンの奥にスマホを入れたときだけ途切れるのも、周囲の荷物や体が影響している可能性があります。

建物では、コンクリート壁、金属扉、エレベーター周辺、配管スペースなどがあると電波が回り込みにくい場面があります。同じ10mでも、見通しの屋外10mと、壁を2枚挟む室内10mはまったく別条件です。

2.4GHz帯の混雑も影響する

Bluetoothは2.4GHz帯を利用します。この周波数帯には、2.4GHzのWi-Fiやさまざまな無線機器も存在します。住宅が密集した場所やオフィスでは、周囲から飛んでくる電波が多くなりやすい環境です。

Bluetoothは周波数を切り替えながら通信し、利用しにくいチャネルの影響を避ける仕組みを持っています。それでも混雑が大きい場所では、再送が増えたり、一時的に音声データが間に合わなくなったりすることがあります。

「自宅では切れるのに公園では平気」「昼は途切れるのに夜は安定する」という場合は、距離だけでなく周囲の電波利用も疑った方がよいでしょう。Bluetoothイヤホンのブツブツ音や音飛びについては、Bluetoothノイズ対策と音飛びの原因でも詳しく解説しています。

受信性能も距離を左右する

送信側ばかり見られがちですが、受信側がどのくらい小さな信号まで正しく受け取れるかも重要です。遠くへ行くほど受信側に到達する電波レベルは下がっていくため、受信性能に余裕のある機器ほど通信を維持しやすくなります。

しかもBluetoothは一方通行ではありません。スマホとイヤホン、PCとマウスのように、両側が役割を変えながら通信します。だから通信距離を考えるときは、片方だけではなく組み合わせ全体を見る必要があります。

◆ワンポイントアドバイス

距離が足りないとき、私は最初に「何m離れているか」より「間に何があるか」を見ます。1m追加するより、金属棚を避ける、PC本体の裏からUSBアダプタを出す、人の体を挟まないようにする方が効くことも珍しくありません。

Bluetooth 5なら遠くなる?

Bluetooth 4.2より5.0、5.0より5.3、5.3より5.4の方が、単純に通信距離が伸びると思っている人もいるかもしれません。ですが、バージョン番号だけで距離を判断するのは危険です。

人体、壁や床、2.4GHz帯の混雑、アンテナの向きがBluetooth距離に影響することを示す図

バージョンとClassは別の話

Bluetoothのバージョンは、通信機能や手順が世代ごとに拡張されてきたことを示します。一方、Power Classは送信電力の区分です。この二つは別の軸。

つまり、Bluetooth 5.x対応だから自動的にClass 1になるわけではありませんし、Bluetooth 4.xのClass 1機器よりBluetooth 5.xのClass 2機器の方が必ず遠くまで届くとも言えません。

Bluetooth 5.3と5.4の世代差について詳しく知りたい場合は、Bluetooth 5.3と5.4の違いも参考にしてください。イヤホン選びでは、バージョン番号だけでなく、実際に対応する機能や製品設計を見ることが大切です。

LE Codedは長距離向け機能

Bluetooth Low Energyには、LE Coded PHYという長距離を意識した物理層があります。Bluetooth SIGの資料では、LE 1Mと比べて、LE CodedのS=2はおおよそ2倍、S=8はおおよそ4倍の範囲を狙える設計になっています。その代わり通信速度は下がります。

ここで注意したいのが、Bluetooth 5.0対応と書いてあるだけでLE Codedが必ず使えるわけではないことです。Bluetooth LEの機能には任意対応のものがあり、製品側が実装していなければ利用できません。

さらに、AirPods Proで音楽を聴くような用途と、センサーが低速データを長距離へ送る用途では、使われるBluetoothの仕組みが同じとは限りません。「Bluetooth 5.0で長距離機能が追加されたから、5.0イヤホンなら距離が4倍」と考えるのは早計です。

注意:Bluetoothのバージョン番号だけを見て通信距離を比較しないでください。長距離機能への対応有無、Power Class、アンテナ、受信性能、用途で使うプロファイルなどを含めて製品仕様を確認する必要があります。

Bluetoothの距離を伸ばす方法

Bluetoothの範囲が足りないときは、いきなり中継器を探すより、まず設置条件と機器の組み合わせを見直すのがおすすめです。BluetoothはWi-Fiのように家庭用中継器を途中へ置けば簡単に同じ接続を延長できる仕組みではありません。

Bluetoothの距離を伸ばすために置き場所、電波混雑、機器を順番に見直す手順図

まず機器の置き場所を変える

一番お金がかからず、効果を確認しやすい方法です。PCのBluetoothアダプタが本体背面に刺さっていて、金属製ケースの陰になっているなら、USB延長ケーブルで机の上へ出すだけでも条件が変わることがあります。

スマホなら、カバンの一番奥や体の反対側のポケットを避ける。テレビ用Bluetoothトランスミッターなら、テレビ背面の配線や金属部品から少し離す。たったこれだけでも、音飛びの出方が変わることがあります。

また、機器同士を一直線に見通せる状態に近づけるほど有利です。壁や家具をゼロにできなくても、金属棚や大型家電の裏を避けるだけなら試しやすいでしょう。

2.4GHzの混雑を減らす

自宅で2.4GHz Wi-Fiを多用しているなら、対応機器を5GHzや6GHzへ移すことで、2.4GHz帯の利用量を減らせる場合があります。Bluetoothそのものの周波数を別の帯域へ変えることはできませんが、周囲の競合を減らす考え方です。

Class 1対応機器を検討する

設置を変えても足りない場合は、Class 1対応Bluetoothアダプタや長距離をうたうレシーバーを候補にできます。特にデスクトップPCのUSB Bluetoothアダプタは交換しやすく、費用も比較的抑えやすい部分です。

ただし、先ほど触れた通り、片側だけClass 1にしても結果は接続相手次第です。購入時は「Class 1」という文字だけでなく、メーカーが示している対応距離、アンテナ構成、対応OS、Bluetoothバージョン、使用条件まで確認しましょう。

Amazonや楽天市場を見ると「100m対応」「長距離」と書かれた製品もありますが、実際に100mを再現できるかは環境に左右されます。壁越しや住宅内で同じ数字になるとは限りません。正確な対応範囲や技適など、日本国内での使用条件はメーカー公式情報も確認してください。

送受信の両側を見直す

PC側のBluetoothアダプタを交換しても改善が少ないなら、接続相手側がボトルネックになっている可能性があります。古いイヤホンや小型機器では、アンテナや受信性能に余裕が少ないこともあります。

Bluetooth通信距離が機器のアンテナ設計や装着状態でも変わることを説明するAnker A3201ネックバンド式イヤホン

Bluetoothイヤホンは筐体形状やアンテナ配置でも届き方が変わる

中継器は最後の候補にする

「Bluetoothの距離を伸ばすなら中継器」と考える人もいると思います。ただ、Bluetoothは一般家庭のWi-Fi中継器のように、どんなイヤホンやマウスでも途中へ中継器を置けば同じ接続をそのまま延長できるわけではありません。

用途によっては専用のトランスミッターやレシーバー、Bluetooth Meshなどの仕組みを使う製品もありますが、通常の音楽再生やマウス接続とは別の話です。だから、一般ユーザーが距離不足を解決する順番としては、設置改善→周囲の混雑対策→Classやアンテナに余裕のある機器へ交換の方が分かりやすいと思います。

◆ワンポイントアドバイス

距離だけを目的に機器を買い足す前に、まずスマホやPCを1~2m動かして変化を見るのがおすすめです。置き場所だけで改善するなら、原因は「スペック不足」ではなく、遮蔽物やアンテナ位置だった可能性が高いです。

用途別の距離の考え方

Bluetoothは用途によって必要な距離がかなり違います。イヤホン、マウス、キーボード、PCアダプタを全部同じ基準で選ぶ必要はありません。自分がどこで、何をしたいのかから考える方が選びやすいですよ。

イヤホンは室内移動を基準にする

Bluetoothイヤホンの場合、スマホを身につけて使うなら1m前後の範囲がほとんどです。問題になるのは、スマホを机や充電場所に置いたまま、キッチンや洗面所など別の場所へ移動するときでしょう。

この用途では、最大距離の数字より「壁を1枚挟んでも切れにくいか」が実用上のポイントになります。私のAirPods Proのテストでも、屋外の見通しでは約20m届いた一方、マンションで階をまたぐと雑音が出ました。距離より床や建物の影響が大きく出た例です。

イヤホンで音飛びが気になるなら、まずスマホを体の近くに置いた状態で再現するか確認してください。近距離なら問題ない場合、イヤホン故障より通信条件を疑いやすくなります。

マウスは長距離より安定性

Bluetoothマウスは、通常ならPCから1m以内で使います。なので、50mや100mという距離性能を重視する場面は多くありません。それより、カーソルが飛ばない、スリープ復帰が自然、複数端末の切り替えがしやすいといった使い勝手の方が重要です。

Bluetoothマウスでは長距離よりデスク周辺での接続安定性が重要であることを示すELECOM M-XGXL50MBS

Bluetoothマウスは長距離性能よりデスク周辺での接続の安定性を優先したい

マウス選びそのものを比較したい場合は、Bluetoothマウスおすすめと選び方で、ロジクール、エレコム、バッファローなどを用途別に紹介しています。

PCアダプタは設置自由度を見る

PCではBluetoothアダプタの位置が通信範囲に響きやすいです。デスクトップPCを机の下に置き、USBアダプタを背面に挿していると、金属ケースや机、壁などに囲まれやすくなります。

この場合、単純に高出力の製品へ交換する前に、USB延長ケーブルや外部アンテナ付きアダプタで設置場所を変えられるか確認する価値があります。アンテナを机の上へ出せれば、同じ部品でも通信の余裕が増えることがあります。

広い部屋や作業場で使うなら、Class 1対応や外部アンテナ付きのBluetoothアダプタが候補になります。ただし、接続するヘッドセットやセンサー側の仕様も合わせて確認してください。

別フロア利用は期待しすぎない

「1階のPCと2階のBluetoothスピーカーをつなぎたい」のように、床をまたぐ用途では一気に条件が厳しくなります。距離が10m未満でも、鉄筋コンクリート床や金属部材が通信経路に入るからです。木造だと問題ない可能性はあります。

こうした用途では、Bluetoothの最大距離だけを頼りにすると不安定になりやすいでしょう。固定設備として別フロアへ音声やデータを送りたいなら、Wi-Fiや有線LANなど別方式の方が目的に合う場合もあります。

Bluetooth距離のFAQ

最後に、Bluetoothの距離や範囲についてよく出てくる疑問にまとめて答えます。製品ごとの差が大きいテーマなので、数字は絶対値ではなく目安として見てください。

Bluetooth距離のよくある質問(FAQ)

Q1. Bluetoothは何mまで届きますか?

A. 一律には決まりません。イヤホンやマウスでは数mから十数m程度で使うことが多いですが、見通しや送信出力、アンテナ、受信性能によってそれ以上届くこともあります。Bluetooth SIGも、通信範囲は1m未満から1km超まで幅があるとしています。

Q2. Bluetooth 5.0なら100m届きますか?

A. Bluetooth 5.0という表示だけで100m届くとは言えません。Bluetooth Low Energyには長距離向けのLE Coded PHYがありますが任意対応で、製品がその機能を実装している必要があります。さらに送信出力、アンテナ、受信性能、壁や干渉でも結果が変わります。

Q3. Class 1なら必ず100m届きますか?

A. 必ずではありません。Class 1は送信電力の区分で、距離を100mと保証する規格ではありません。壁、床、アンテナ、接続相手の受信性能、相手側から返す通信などで実用距離は変わります。

Q4. Bluetoothは壁を何枚まで通りますか?

A. 壁の枚数だけでは判断できません。石こうボード、木材、コンクリート、鉄筋、金属扉などで減衰量が違います。同じ1枚でも条件は大きく変わるため、「何枚まで」と固定値で考えず、実際の設置場所で確認するのが確実です。

Q5. Bluetoothの距離を伸ばすには何を買えばいいですか?

A. まずは購入前に置き場所を変えてください。それでも不足する場合は、PCならClass 1対応や外部アンテナ付きBluetoothアダプタが候補になります。ただし接続相手側の性能も影響するので、片側だけ交換すれば必ず改善するとは限りません。製品ごとの正確な仕様はメーカー公式サイトを確認し、用途や安全面で判断に迷う場合はメーカーサポートなどの専門窓口へ相談してください。

Bluetoothの距離まとめ

Bluetoothの距離を気にする前に障害物や機器同士の組み合わせを確認する重要性を示すまとめ図

Bluetoothの距離は「Bluetooth 5.0だから何m」「Class 2だから最大10m」のように、一つの数字だけでは決まりません。送信出力、アンテナ、受信性能、壁や床、人体、2.4GHz帯の混雑などが重なって、実際に使える範囲が決まります。

今回、AirPods Pro(第1世代)とiPhone SE(第3世代)で試したところ、夜の住宅街の見通し環境では約20m付近まで音声を再生できました。一方、鉄筋コンクリート造マンションでは、室内の水平移動は問題が出にくかったものの、ベランダや上階へ移動すると雑音が入りました。

この結果だけ見ても、Bluetoothは距離そのものより、障害物と周囲の環境で使い勝手が変わることが分かります。

  • Bluetoothの10mは絶対的な上限ではない
  • Power Classは距離ではなく送信電力の区分
  • Bluetoothのバージョンだけでは実用距離を判断できない
  • 距離不足では設置場所と2.4GHz帯の混雑を先に見直す
  • 必要ならClass 1対応やアンテナに余裕のある機器を検討する
  • 片側だけ交換しても接続相手が原因なら改善が限定される

私なら、Bluetoothの距離を伸ばしたいときは中継器から探しません。まず置き場所を変え、遮蔽物を減らし、周囲の2.4GHz帯の利用を見直します。それでも足りなければ、Classやアンテナ設計を確認して機器を選び直します。この順番の方が、無駄な買い物をしにくいですよ。

プロフィール画像

レオ

Wireless Tech Note 運営者 無線技術や通信の仕組みを、できるだけやさしく整理して発信しています。第一級陸上無線技術士・基本情報技術者の知識と、RF設計・EMC実務の経験を活かして記事を作成しています。

-無線規格・ネットワーク