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スミスチャートの使い方|読み方と整合を無料ツールでやさしく解説

「スミスチャートの使い方|読み方と整合を無料ツールでやさしく解説」のタイトルと、簡略化したスミスチャートを配置したアイキャッチ画像。

スミスチャートを開いたものの、丸い線がいくつも重なっていて、どこを読めばよいのか分からない。コイルやコンデンサを足したとき、点がどちらへ動くのか迷うこともありますよね。

先に結論をいうと、スミスチャートの使い方は、基準インピーダンスを確認し、負荷の位置を読み、直列ならZ、並列ならYで部品の働きを追うと理解しやすくなります。最初から目盛りを全部覚える必要はありません。

私も回路の検討で計算ツールを使いますが、設定や操作に時間がかかることがあります。そこで、抵抗・コイル・コンデンサを追加したときの変化をブラウザで確認できるスミスチャート体験ツールを作りました。この記事では、第一級陸上無線技術士・無線回路設計者のレオが、読み方から50Ωへの整合例まで順番に解説します。

  • 中心・上半分・下半分の意味と目盛りの読み方
  • 直列と並列で異なる抵抗・コイル・コンデンサの動き
  • 無料ツールで50Ωへの整合を試す手順
  • VNAの測定結果と計算が合わないときの確認点

スミスチャートの使い方と読み方

まずは、何を表す図なのかをつかみましょう。ここでは基準インピーダンスZ₀を正の実数とし、インピーダンスの目盛りを持つ一般的なスミスチャートを扱います。特に断りがなければ、部品は理想的なR・L・Cです。

スミスチャートで分かること

スミスチャートは、交流回路のインピーダンスと反射の状態を、一つの円の中で読み取れる図です。インピーダンスとは、交流に対する電圧と電流の関係を表す量で、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xに分けて考えます。

Z=R+jXと書き、単位はΩです。jは虚数単位で、電圧と電流の位相差を扱うための記号。最初は「Rは抵抗成分、Xはコイルやコンデンサによる成分」と受け止めれば大丈夫ですよ。

例えば、25−j25ΩならRは25Ω、Xは−25Ω。これは「抵抗値がマイナス」という意味ではなく、全体として容量性のリアクタンスを持つ状態です。実際の回路内部に25Ωの抵抗と特定のコンデンサが必ず入っている、という意味でもありません。

図を見ると、負荷が誘導性なのか容量性なのか、基準の50Ωからどれほど離れているのかがつかめます。部品の追加後も同じ図で追えるため、アンテナや高周波回路のインピーダンス整合に役立ちます。

一方、スミスチャートだけでアンテナの放射効率や利得、増幅器の雑音性能まで分かるわけではありません。まずはその測定面から見たインピーダンスと反射を知る図として使うのが出発点です。

中心と上下左右の意味

50Ω基準のスミスチャートで、中心が50+j0Ω、左端が短絡、右端が開放、上半分が誘導性、下半分が容量性、水平線が純抵抗であることを示す図。

最初に覚えたいのは、中心、左右の端、上半分、下半分の五つ。通常のインピーダンス表示では、中心が基準インピーダンスに一致する点です。50Ω基準なら50+j0Ω、75Ω基準なら75+j0Ωになります。

インピーダンス表示の基本的な位置
位置 意味 50Ω基準の例
中心 基準と一致し、反射がない 50+j0Ω
左端 理想的な短絡 0Ω
右端 理想的な開放 インピーダンスが無限大
上半分 Xが正の誘導性 50+j25Ωなど
下半分 Xが負の容量性 50−j25Ωなど
中央の水平線 X=0の純抵抗 25Ω、50Ω、100Ωなど

中央の水平線では、中心より左が基準より小さい抵抗、右が大きい抵抗です。ただし、円内のどこでも「右側だから抵抗が大きい」と読めるわけではありません。水平線を外れた点は、後述する等抵抗円を使って読みます。

また、水平線に来たことと整合したことは別です。25+j0Ωはリアクタンスがゼロですが、50Ω基準では中心より左側。共振してX=0になっても、Rが基準値に一致しなければ無反射にはなりません。

正規化と50Ω基準の読み方

紙のスミスチャートには、0.5、1、2などの数字が書かれています。これらは多くの場合、Ωそのものではなく、基準インピーダンスで割った値です。この操作を正規化と呼びます。

正規化インピーダンス:z=Z/Z₀=r+jx

50Ω基準でZ=25+j25Ωなら、z=0.5+j0.5です。逆に、図からr=0.5、x=0.5と読んだら、それぞれ50を掛けて25+j25Ωに戻します。

この仕組みによって、一枚の図を50Ω系にも75Ω系にも使えます。中心の目盛りはどちらも1ですが、実際のΩの値は違うわけです。測定器とツールの基準設定が違えば、同じ負荷でも点の位置が変わります。

例えば75Ωの純抵抗は、50Ω基準ではz=1.5なので中心より右側。75Ω基準ならz=1で中心です。「中心からずれているから部品が不良」と考える前に、何Ωを基準にしているか確認してください。

なお、VNAのマーカーは正規化値ではなく、最初からΩ単位のR・Xを表示することがあります。表示にΩが付いている値を、さらに50倍しないよう注意しましょう。図の目盛りとマーカーの単位を分けて読むと混乱しにくくなります。

等抵抗円とリアクタンスの目盛り

図の中にある、右端に接する丸い線が等抵抗円です。同じ円の上では、正規化抵抗rが一定になります。対して、右端へ集まる曲線が等リアクタンスの円弧で、こちらはxが一定です。

25+j25Ωを50Ω基準で探すなら、まずr=0.5の円を選び、上半分のx=+0.5の円弧との交点を見つけます。25−j25Ωなら同じ等抵抗円の下側、x=−0.5との交点です。正負だけが違う二つの点は、水平線を挟んで対称になります。

反対に、点から値を読むときは、その点を通る等抵抗円と等リアクタンスの円弧をたどります。細かい目盛りの間なら、おおよその値を読み、正確な値はマーカーや計算で確認すれば十分です。

普通のグラフの感覚で「横の位置がR、縦の位置がX」と読まないことが大切です。スミスチャートの平面座標そのものは反射係数の実部と虚部であり、RとXを読むために曲がった目盛りが重ねられています。

書き方を練習するなら、まず純抵抗の25Ω、50Ω、100Ωを水平線上に置き、次に50+j50Ωと50−j50Ωを加えてみてください。同じ抵抗のまま上下に変化する位置関係をつかめます。

反射係数とSWRの関係

25+j25Ωを50Ωで正規化して0.5+j0.5とし、r=0.5の円とx=+0.5の円弧の交点を読む図。25−j25Ωは水平線を挟んだ対称位置にある。

中心からの距離は、反射係数の大きさと対応します。外周までの半径を1とすると、中心から点までの距離が|Γ|です。Γはガンマと読み、基準面における反射波と入射波の電圧の比を表します。

Γ=(Z−Z₀)/(Z+Z₀)なので、Z=Z₀ならΓ=0となり、点は中心に来ます。中心を囲む同心円上では|Γ|が同じですから、インピーダンスが違ってもSWRが同じになることがあります。

例えば50Ω基準の25Ωと100Ωは、Γがそれぞれ−1/3と+1/3。位置は左右に分かれますが、|Γ|は同じ1/3なので、どちらもSWRは2です。「SWRが2」という数字だけでは、抵抗が高い側か低い側かまで判別できません。

VSWR=(1+|Γ|)/(1−|Γ|)

リターンロス=−20 log₁₀|Γ|[dB]

反射電力の割合=|Γ|²

上の例では反射電力の割合は約11.1%、リターンロスは約9.54dBです。これは理想的な条件に式を当てはめた計算例で、製品の実測値や一律の合否基準ではありません。

VNAのS11を対数表示すると約−9.54dB、リターンロスとして表すと約+9.54dBです。符号の違いにも注目してください。一般に整合がよくなるほどS11の対数値は負の方向へ、リターンロスは正の大きな値へ向かいます。

50Ω基準で25Ωと100Ωを中心の左右に置き、中心から同じ距離にあるため反射係数の大きさがともに1/3、SWRがともに2になることを示す図。

直列部品を入れたときの動き

直列接続はインピーダンスの足し算です。負荷をZとすると、直列抵抗はZ+R、直列コイルはZ+jωL、直列コンデンサはZ−j/(ωC)。ωは2πfで、fは周波数です。

理想的な直列L・Cでは抵抗成分Rは変わらず、Xだけが変わります。そのため、点は同じ等抵抗円に沿って移動します。直列LはXを正の方向へ、直列Cは負の方向へ変える部品です。

ここで「コイルを入れると必ず上半分に行く」と覚えるのは少し危険。負荷が25−j50Ωで、コイルによって+j20Ωを追加しても、結果は25−j30Ωなので下半分に残ります。コイルはXを増やしますが、もとの負のXを打ち消し切るとは限りません。

周波数を固定して理想部品を直列追加したとき
追加部品 変わる量 移動の見方
直列R Rが増え、Xは一定 等リアクタンス円弧上を開放側へ
直列L XにωLを加える 等抵抗円上を時計回り
直列C Xから1/(ωC)を引く 接続前から等抵抗円上を反時計回り

直列Cを追加することと、接続済みのCの容量を増やすことは区別してください。周波数一定でCを大きくすると、1/(ωC)は小さくなります。つまり、負のリアクタンスの絶対値が減り、接続済みの点は時計回りに戻る方向へ動きます。

この違いは、部品の種類だけで矢印を暗記すると混乱しやすいところです。「何を追加したか」と「どの値を増減させているか」を確認し、最後はXの増減に立ち返ってみましょう。

周波数を固定して理想部品を直列追加した場合、Rは抵抗成分を増やし、Lはリアクタンスを増やし、Cは減らすことと、それぞれのスミスチャート上の経路を示す図。

並列接続はアドミッタンスで考える

並列回路は、インピーダンスのままだと計算が複雑になります。そこで逆数のアドミッタンスY=1/Z=G+jBを使います。単位はS(ジーメンス)で、Gがコンダクタンス、Bがサセプタンスです。

名前は難しそうですが、目的は「並列を足し算にする」こと。並列抵抗ならYに1/Rを、並列CならjωCを、並列Lなら−j/(ωL)を加えます。計算後に逆数を取れば、全体のインピーダンスに戻せます。

理想的な並列L・CではGが一定なので、等コンダクタンス円に沿って移動します。通常の反射係数平面にYの目盛りを重ねた図では、並列Cの追加は時計回り、並列Lの追加は反時計回りです。

ただし、並列Lのインダクタンスを増やすと、追加する負のBの絶対値は小さくなります。直列Cの場合と同じく、部品を追加する方向と、その値を増やした場合の方向を混同しないようにしてください。

正規化アドミッタンスはy=Y/Y₀=Z₀Y=1/zで、Y₀=1/Z₀です。例えばz=0.5+j0.5ならy=1−j1。Zだけの目盛りを使う紙の図では、中心の反対側の点で逆数の値を読めます。

一方、ZとYの目盛りが重なった図では、同じ負荷の点をそのままYの目盛りで読めます。Yの目盛りを表示しただけで、実際の負荷や反射係数が別のものになるわけではありません。

周波数を固定し、理想部品を並列に追加したときの軌跡を示す図。並列RはB一定でGが増える。並列LはG一定でBが減り、等コンダクタンス円を反時計回りに移動する。並列CはG一定でBが増え、同じ円を時計回りに移動する。

スミスチャートの使い方を実践する

ここからは、無料の体験ツールで点を動かし、50Ωに整合するまでを追います。数値は仕組みを理解するための理想計算です。実際に部品を選ぶ前に、まず接続順序と変化の理由をつかんでください。

無料ツールの基本操作

スミスチャート体験ツールでは、周波数、基準Z₀、負荷のRとXを指定し、R・L・Cを直列または並列に追加できます。インストールは不要で、部品値を変えながら経路と計算結果を確認できます。

  1. 「出発点を決める」で周波数・基準Z₀・負荷のRとXを入力します。
  2. 追加する部品と、直列・並列の接続方法を選びます。
  3. 部品値を入力するか、スライダーで変えて経路を確認します。
  4. 「この部品を確定」で採用し、必要に応じて次の部品を加えます。

橙色の経路と部品は追加予定です。確定すると、次の部品を重ねて検討できます。変更したいときは「1つ戻す」、最初から試すときは「確定部品を全消去」を使ってください。別の例に進む際は、周波数や負荷の入力値も確認しましょう。

部品値の上下ボタンはE12系列の値へ切り替わります。計算例に合わせた細かい値を試すときは、数値を直接入力する方が便利です。nHとµH、pFとnFは1,000倍違うので、数字だけでなく単位まで合わせます。

特に大切なのは、部品は負荷側から順番に追加され、並列部品はそれまでの回路全体に並列接続されることです。回路図は左が入力、右が負荷。履歴の追加順と、回路図を左から読む順番は一致しない場合があります。

◆ワンポイントアドバイス

最初は周波数と負荷を固定して、部品を一つだけ変えてみてください。私がこのツールで伝えたいのは、数字を入力すると答えが出ることよりも「なぜその方向へ動いたのか」を目で追えることです。R・Xの数値も一緒に見ると理解が進みますよ。

リアクタンスを打ち消す練習

最初の練習は、周波数100MHz、基準50Ω、負荷25−j25Ωです。ツールではRに25、Xに−25を入力します。この点は、正規化すると0.5−j0.5で、下半分にあります。

ここへ直列コイルを入れ、−j25Ωを打ち消してみましょう。コイルに必要なリアクタンスは+j25Ωなので、L=25/(2π×100×10⁶)≒39.79nHです。約39.79nHを入力すると、結果はほぼ25+j0Ωになります。

点は水平線へ来ますが、まだ中心ではありません。Rが25Ωのままだからです。さらに直列コイルを増やすと上半分へ進みますが、Rは変わらないので、直列Lだけでは50Ωの中心に到達できません。

ここで25Ωの直列抵抗を追加すれば、見かけ上は50Ωにできます。ただし、追加した抵抗も電力を消費します。この例では二つの25Ωに同じ電流が流れるため、受け入れた電力の半分が追加抵抗で消費されます。

反射を減らすことと、目的の負荷へ効率よく電力を渡すことは別の課題です。損失を抑えたい整合では、理想的には電力を消費しないL・Cによる変換を検討します。抵抗による整合は、減衰を許容する用途などで使い分けるものです。

100MHzで25−j25Ωに直列L約39.79nHを加えると、ほぼ25+j0Ωになるが、50Ω基準の中心には届かないことを示す理想計算の図。

二つの部品で50Ωへ整合する

次は同じ25−j25Ωの負荷を、直列Lと並列Cで50Ωへ変換します。前の練習で確定した部品は全消去し、100MHz・基準50Ω・R=25Ω・X=−25Ωから始めてください。

今回は負のXをゼロにするだけでなく、直列Lで+j50Ωを追加します。必要な値はL=50/(2π×100×10⁶)≒79.58nH。追加後のZは25+j25Ωになります。

この点でアドミッタンスに変換すると、Y=1/(25+j25)=0.02−j0.02Sです。Gが0.02S、つまり50Ωの逆数になっていることがポイント。あとは並列部品で−j0.02Sを打ち消せば、50Ωにできます。

並列Cが加えるのは+jωCなので、C=0.02/(2π×100×10⁶)≒31.83pF。これを追加すればY=0.02+j0Sとなり、その逆数は50+j0Ωです。

100MHzで25−j25Ωを50Ωへ変換する理想計算
段階 操作 入力側から見た値
出発点 負荷を設定 Z=25−j25Ω
一つ目 直列Lを約79.58nH追加 Z≒25+j25Ω
二つ目 回路全体に並列Cを約31.83pF追加 Y≒0.02S、Z≒50Ω

ツールでは「直列L」を約79.58nHにして確定し、その後「並列C」を約31.83pFにします。入力から見ると、最初の節点にCが接地され、その先に直列Lと負荷がある回路です。Cを元の負荷だけに並列接続すると、別の回路になります。

100MHzで25−j25Ωへ直列L約79.58nH、続いて回路全体へ並列C約31.83pFを追加し、50Ωへ整合する経路と、入力側の節点にCを接続する回路を示す理想計算の図。

もう少し中心に近づけたい場合は、L=79.5774715nH、C=31.8309886pFを入力できます。丸めや計算精度によって微小な誤差が残ることはありますが、数学的な整合点ではΓ=0、VSWR=1です。

リターンロスに極端に大きな数字が出ても、実機でその性能を保証する意味はありません。理想的な完全整合ではリターンロスは無限大となるため、中心のごく近くでは丸め誤差が表示値に大きく影響します。

この例では途中の25+j25Ωも、出発点の25−j25Ωも、|Γ|は同じです。一つ目の部品で反射が減らなくても、次の並列部品で整合できる位置へ移動する役割があります。各段階で中心へ近づくことだけを条件にしないでください。

実際の製品では、ここまで正確なインダクタ、コンデンサは存在しません。また、個体ばらつきもあります。精度やばらつきを考慮した上で設計をすることが重要です。

周波数を変えたときの注意点

同じ部品値でも、周波数が変わるとリアクタンスは変わります。コイルはX=2πfLなので、周波数を2倍にするとXも2倍。コンデンサはX=−1/(2πfC)なので、周波数を2倍にすると負のXの絶対値は半分です。

例えば、100MHzで+j50Ωだった約79.58nHのコイルは、200MHzでは約+j100Ωになります。100MHzで整合した回路が、200MHzでも整合するとは限らないわけです。

また、「部品値を動かして描く経路」と「周波数を掃引して得られる軌跡」は別物です。VNAの線は、通常、周波数ごとの測定点をつないだもの。どの点がどの周波数なのかはマーカーで確認します。

ツールで周波数を変える場合も、入力した負荷のR・Xが実物の周波数特性を自動で表すとは考えないでください。アンテナなどの負荷自体も周波数で変わるので、実際の広帯域評価には各周波数の負荷データが必要です。

用途に必要な帯域全体で反射を許容範囲に収められるか、部品の損失や許容差を含めて確かめます。単一周波数の中心合わせは、その検討の入口です。

周波数を固定して部品値を変える場合と、部品値を固定して周波数を変える場合を比較した図。同じ約79.58nHの理想コイルは100MHzで約+j50Ω、200MHzで約+j100Ωとなる。

VNAで測定するときの見方

実物の回路を確認するには、反射の大きさと位相を測れるベクトルネットワークアナライザ(VNA)を使います。一般的にはS11を選び、表示形式をSmithに設定して、目的の周波数にマーカーを置きます。

液晶画面と二つの測定ポートを備えたKeysight E5063Aネットワークアナライザ

Keysight ネットワークアナライザ。実機の反射測定では、測定面を決めて校正したうえでインピーダンスを確認します。

測定の前には周波数範囲を決め、対象物を接続する位置で適切に校正します。1ポート反射測定なら、オープン・ショート・ロードを使う校正が代表的です。具体的な手順や校正器の設定は機種の説明書に従ってください。

ケーブルの手前で校正して、その先にケーブルや変換コネクタを追加すると、その影響も測定に含まれます。「アンテナ端子の値を知りたいのか」「ケーブル込みの入力を知りたいのか」を先に決めることが大切です。

基準と同じ特性インピーダンスの無損失線路なら、負荷から電源側へ測定面を移すと、点は中心を囲む等|Γ|円上を時計回りに移動します。コイル追加で動く等抵抗円とは別の円です。線路内波長の半波長分で一周するので、ケーブル長によって誘導性・容量性の見え方も変わり得ます。

測定器の選び方は、ネットワークアナライザの価格と業務用VNA・NanoVNAの比較で解説しています。スミスチャートを表示できることに加え、使用周波数や必要な測定確度も確認して選びましょう。

VNAと対象物をケーブルで接続した二つの模式図で、対象物の端子で校正した場合とケーブルの手前で校正した場合の、測定に含まれる範囲を比較する図。

計算と実測がずれる理由

体験ツールで中心に来ても、同じ値の部品を実装すれば必ず中心に来るわけではありません。コイルには巻線抵抗や寄生容量、コンデンサには損失や寄生インダクタンスがあり、理想部品と同じ動作をする範囲には限りがあります。

特に自己共振周波数の近くでは、部品名だけから動きを判断できません。実物のコイルが高い周波数で容量性に見えることもあります。データシートの公称値だけでなく、使用周波数での特性を確認してください。

さらに、基板の配線、ランド、ビア、グラウンドへの接続も回路の一部です。並列コンデンサを置いたつもりでも、接地までの配線にインダクタンスがあると、理想的な並列Cとは異なる動きになります。

合わないときは、まず周波数・単位・Z₀・負荷値・接続順を確認します。次に校正面と治具、最後に部品モデルや実装の影響を調べると、原因を追いやすくなります。測定ケーブルを動かしただけで結果が変わるなら、再現性の確認も必要です。

本記事の部品値は理想計算の例です。実設計の初期検討では目安として扱い、採用値は部品仕様、解析、実測に基づいて決めてください。正確な情報はメーカーの公式サイトをご確認ください。高出力回路など、定格や発熱の検討を伴う設計の最終的な判断は専門家にご相談ください。

書籍で計算を学びたい方へ

ツールで動きをつかんだら、次は紙の図や式で同じ変化を追ってみると理解が深まります。書籍を選ぶなら、正規化、アドミッタンス、直列・並列の部品追加、整合例が順番に載っているものが取り組みやすいでしょう。

その候補が、大井克己著・CQ出版社の『スミス・チャート実践活用ガイド【オンデマンド版】』です。出版社の目次では、基礎的な読み方から集中定数・分布定数回路による整合まで扱っています。

書籍に付属する古いソフトは、現在のパソコン環境でそのまま動くとは限りません。購入前に動作条件を確認し、まず試し読みで説明の難易度が自分に合うか確かめてください。価格や在庫についても、購入先の最新表示を確認しましょう。

スミスチャートのよくある質問

Q1. 抵抗とコイルだけなら下半分には来ませんか?

A. 正の抵抗と理想コイルを直列・並列に組み合わせた集中定数回路で、容量性の負荷や伝送線路を含まなければ、通常のインピーダンス表示でXは負になりません。ただし、実物の寄生容量、もとの負荷の容量性、ケーブルによる変換があれば下半分に来ることがあります。「部品表にCがない」だけでは判断できません。

Q2. 中心ならアンテナの性能もよいですか?

A. 中心は、その周波数・測定面・基準インピーダンスで反射がない状態です。放射効率や利得まで保証するものではありません。50Ωの終端抵抗でも中心に来るため、アンテナの評価では整合に加えて放射性能や損失を確認します。

Q3. 周波数はスミスチャートのどこで読みますか?

A. 円の目盛りそのものに周波数軸はありません。VNAの軌跡ならマーカーに表示される周波数を読みます。体験ツールでは設定した周波数が計算条件です。同じ位置に見える点でも、周波数が同じとは限りません。

Q4. 並列Cと直列Cの順番を入れ替えても同じですか?

A. 一般には同じになりません。直列部品を追加してから回路全体に並列部品を付ける場合と、負荷に並列部品を付けてから直列部品を追加する場合では回路の接続が異なります。値と部品名だけでなく、どの節点へつながるか確認してください。

Q5. 円の外側に点が出たら故障ですか?

A. 正の実数Z₀を基準とする通常の受動負荷では|Γ|は1以下ですが、負性抵抗を示す能動回路などは円外に出ることがあります。受動部品の測定で少し円外へ出た場合は、表示スケール、校正、測定誤差も確認します。円外という理由だけで故障とは断定できません。

スミスチャートの使い方のまとめ

スミスチャートは、読み方と部品の働きを結び付けると、複雑な模様から回路の変化を追う図へ変わります。まずは50Ω基準の中心と、上下のリアクタンスの意味から始めてみてください。

  • 図の値が正規化値かΩ表示かを確認する
  • 直列L・CはZで考え、等抵抗円をたどる
  • 並列L・CはYで考え、等コンダクタンス円をたどる
  • 部品の追加と、部品値の増減を区別する
  • 整合例を再現したら、周波数や部品値を一つずつ変える
  • 実設計では校正面・部品特性・実装を含めて実測する

今回の例は、100MHzの25−j25Ωに直列Lを約79.58nH、その回路全体に並列Cを約31.83pF追加する流れでした。数値だけを覚えるより、なぜ途中で25+j25Ωを目指すのかを説明できるようになると、ほかの負荷を検討するときにも役立ちます。

体験ツールは、その理解を助けるためのものです。計算で見通しを立て、部品仕様を確認し、最後に実機で確かめる。この順番で、スミスチャートを設計や測定に使っていきましょう。

参考資料

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